【抜粋版】高齢者施設のリスクマネジメント 事故防止活動やヒヤリハット活動の進め方、事故発生時の対応の他、転倒・誤えん・誤薬・異食・行方不明・家族トラブル防止策など具体策が満載

【抜粋版】高齢者施設のリスクマネジメント 事故防止活動やヒヤリハット活動の進め方、事故発生時の対応の他、転倒・誤えん・誤薬・異食・行方不明・家族トラブル防止策など具体策が満載

「一生懸命事故防止活動に取り組んでいるが事故が減らない」という声を介護現場でよく聞きます。職員はヒヤリハットシートをたくさん書いて提出し、事故防止委員会を開いて事故やヒヤリハットの集計をしているのに成果が上がらないのです。なぜ成果に結びつかないのでしょうか。事故防止活動の進め方(マネジメント)を少し変えてみたらどうでしょうか?介護現場は人が生活することに伴う難しい事故がたくさん起こりますから、ちょっと視点を変えて「介護用の事故防止活動」に切り替えると半分の労力で倍の成果が生まれるかもしれません。

■新しい事故防止活動に切り替えよう
介護における事故防止活動は「事故は職員のミスが原因で起こる」という考えのもと、「職員がミスをしないように管理する」が一般的な事故防止活動の手法でした。「もっと慎重に」「もっと注意深く」と指導することでミスが減り、事故も減ると考えられていたのです。しかし、ミスの多くは「人にミスを犯させる原因」によって引き起こされるので、「慎重に」「注意深く」と言うだけでは事故は減りません。
それを改善するために生まれたのが、新しい事故防止活動の考え方です。「人は誰でもミスをする」ことを前提に、事故防止に取り組むのです。考え方のポイントは2つあります。

①ミスには必ず原因がある
ベッドから車いすへ移乗介助中に利用者を転倒させる事故が起きました。職員は「私の不注意が原因です。今後はもっと注意深く移乗介助を行います」と事故報告書に記載するでしょう。しかし、これでは事故の原因はわかりません。「職員の不注意」で済ませないで状況を検証しないかぎり、他の職員がまた同じ原因で同じミスを犯してしまうことになるのです。
たとえば、検証してみるとこんなことがわかるかもしれません。この車いすには「フットサポートが開く」「アームサポートが上がる」機能が備わっていませんでした。これらがなければ、移乗時にフットサポートに足が引っかかったり、アームサポートにお尻がぶつかりやすいので、職員は無理やり利用者の上半身を引っ張り上げることになります。無理やり介助をすることで、事故の危険は高くなります。安全機能の低い車椅子も、ミスの原因かもしれません。ミスには必ず原因があります。原因を明らかにして対処することが大切です。

②ミスを発見する仕組みをつくる
2つ目の考え方は「ミスが起きたときにミスを発見するチェックの仕組みをつくる」です。典型的な対策例として誤薬事故の防止対策があります。
与薬ミスをしないように「お薬袋の印字を読み上げて確認する」とか、利用者を取り違えないように「氏名を声に出して読み上げる」などは多くの施設が行っていることでしょう。もちろん、これらは大切なことですが、もっと重要なのは、与薬ミスや利用者の取り違いミスが起きたときに、それを発見するチェックの仕組みをつくることです。
私たちは、この与薬直前のチェックのために、「お薬確認シート」というチェックシートに薬と利用者の写真を載せています 。与薬直前に職員が手に取った薬が本人の薬なのかという照合と、目の前の利用者が本人なのかという本人確認の仕組みに重点をおくのです。デイサービスであれば、居宅からお持ちいただくお薬袋をつくり、薬の写真と本人の写真を入れて与薬直前に照合するとよいでしょう。
新しい事故防止活動では、個々の職員の努力に頼るのではなく、「組織で事故防止に取り組み、仕組みによって事故を防ぐ」という考え方をします。

■防ぐべき事故と防げない事故を区分する
事故防止を考える際に重要なのは、すべての事故は防げないという視点です。介護の現場には防げない事故がたくさんあります。それを理解しないですべての事故を防ごうとすると「立ち上がるから転倒するのだから、できるだけ静かに座っていていただこう」などと、身体拘束や行動抑制が始まります。
介護の事故防止活動では、防ぐべき事故と防げない事故に分けて防ぐべき事故に対して優先的に事故防止対策を講じなければなりません。では、防ぐべき事故と防げない事故はどのように区別したら良いのでしょうか?
次の図のように、防ぐべき事故とは“施設側に過失がある”、すなわち過誤といわれる事故です。過失のある事故とは、やるべき事故防止対策をきちんとやっていれば防げるのにそれを怠ったために起こった事故です。逆に、過失のない事故は、やるべきことをきちんとやっても防げない事故です(当然、法的責任も問われません)。

「防ぐべき事故」と「防げない事故」を明確に区分するために、認知症利用者の歩行時の転倒など、利用者の自発的な生活動作によって起きる防げない事故を生活事故、移乗介助中の転倒などの防ぐべき事故を介護事故と呼んでいる施設もあります。生活事故まで含めてすべてを防ごうとすると、利用者の生活行為の制限や抑制につながってしまい本末転倒になってしまいます。すべての事故は防げないこと、事故はゼロにならないことを肝に命じておきましょう。
防ぐべき事故がどんな事故で防げない事故がどんな事故なのか、判断の難しい事故もたくさんあるので、典型的な事故の事例を知っておくと2つの区分が理解しやすくなります。例えば次の2つの事故を考えてみて下さい。
●防ぐべき事故の典型事例
介護職員のAさんは、車椅子介助の利用者の排泄介助時に車椅子のブレーキを確認せずに移乗介助を行ったため、急に車椅子が動いて利用者を転倒させてしまいました。
⇒事故原因が介助ミスなので防ぐべき事故と判断されます

●防げない事故の典型事例
デイルームのソファでうたた寝をしていた認知症の利用者が、いきなり立ち上がって歩き出そうとしてバランスを崩して転倒しました。介護職員のBさんが駆け寄りましたが間に合いませんでした。
⇒気付いて駆け寄っても間に合わないので、防げない事故と判断されます

■「防げない事故」への対応策
さて、防ぐべき事故と防げない事故の区分ができたら、次の防げない事故に対する対応も考えなければなりません。防げない事故は放置しておいてよい訳ではありません。
防げない事故への対策の一つとして、「損害軽減策 」があります。これは「事故が発生してもケガをさせない(もしくは軽減する)」という方法で、生活事故に対してはかなり有効です。
認知症利用者の歩行中の転倒防止策では、安全に歩くための条件づくりと転倒してもケガをさせないための損害軽減策の2つを基本にします。安全に歩くための条件づくりとしては、履きなれた安全な履物、歩きやすい服装、杖などの歩行補助用具などです。転倒してもケガをしないための損害軽減策としては、大腿骨を保護するサポーターベルトを付ける、レッグウォーマーを膝まで上げて膝を保護するなどがあります。
それでも、事故は発生しますから家族に防げない事故があることを、理解してもらわなくてはなりません。この取組は大変難しいので工夫が必要です。
防げない事故まで防ごうとするのは利用者の自発的な行動をやめさせることにつながります。それは、介護本来の目的から外れることです。防ぐべき事故にはきちんと防止対策を講じ、防げない事故は事故のリスクを理解して、家族にリスクを共有してもらいましょう。大切なのはその伝え方です。
事故のリスクは防止対策とセットで伝えるとよいでしょう。「お母様は転倒される危険があるので、私たち職員はソファの横に重い椅子を置いています」と具体的に転倒防止対策を伝えるのです。具体的に説明することで、家族も職員の話に耳を傾けてくれるでしょう。
さらに、家族に事故のリスクを受け入れてもらうためには、家族にも事故防止活動の一端を担ってもらうのが効果的です。利用者の現状を知ってもらいリスクを共有しておけば、事故が起こったとしても家族がやみくもに施設を責めたり、訴訟にまで発展することはないでしょう。ふだんの施設の努力を知っているからです。

■事故は5段階で評価する
事故の再発防止のためには、起こった事故を検証・評価する必要があります。事故の評価方法は目的によってさまざまな基準がありますが、下表のように、起こった事故をその質によって5段階に分けることで、現場スタッフの対応を正当に評価することができます。さらにこの評価で的確な取組方針を打ち出すことができます。

たとえば、レベル1のルール違反による事故が起きれば、ルールを守らせる取り組みが必要ですし、現場の職員には責任を感じてもらわなければなりません。レベル2の職員のミスが原因で起きた事故であれば、ミスを減らす取り組みやミスを発見するチェックの仕組みをつくらなければなりません。
そして、レベル5は既に説明したように防げない事故なのですから、それが死亡事故であっても現場を責めてはいけないのです。管理者は「この事故は防ぎようがないのだから、現場の責任ではない」と職員にも家族にも明言する必要があります。
このように、事故の質を評価して5つに分けることで、事故に対する的確で効果的な取組方針を打ち出すことができるのです。

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