ちょっと知りたい!看護実習ミニ辞典:呼吸のフィジカルアセスメント

成人

呼吸のフィジカルアセスメントでは、視診、触診、打診、聴診で得た情報を組み合わせます。
一つの所見だけで判断せず、呼吸数、SpO₂、息苦しさ、咳、痰などと合わせて見ます。

最初に呼吸の全体像を見る

はじめに、患者さんの呼吸状態を観察します。

・呼吸数、深さ、リズム
・会話が続けられるか
・努力呼吸、鼻翼呼吸、陥没呼吸がないか
・左右の胸郭が同じように動いているか
・起坐呼吸や前かがみの姿勢をとっていないか
・口唇や爪床の色
・意識状態、表情、発汗

強い呼吸困難、会話困難、意識の変化、チアノーゼなどがある場合は、詳しい診察を続けるより速やかな報告を優先します。

つぎに胸郭の形と動きを見る

正面、側面、背面から胸郭を観察します。

・左右対称性:肩、鎖骨、肩甲骨の高さを比べ、呼吸に伴う胸郭の動きに左右差がないか確認します。
・胸郭の前後径と横径:成人では、前後径と横径の比は1:1.5〜2.0が目安です。前後径が拡大して横径との差が小さくなる状態を樽状胸といい、COPDなどでみられることがあります。
・肋骨角:通常は90度以下です。90度を超えて開大している場合は、胸郭の過膨張を考える手がかりになります。
・肋骨の傾き:側面から見た肋骨は、脊柱に対して約45度傾いています。水平に近づいている場合は、胸郭の過膨張を考える手がかりになります。
・胸郭の形:正常な胸郭は円錐状です。変形の有無だけでなく、呼吸状態に影響していないかも確認します。
漏斗胸:胸骨下部が内側へ陥凹している状態です。
鳩胸:胸骨下部が前方へ突出している状態です。
側彎症:脊柱が側方へ曲がり、肩や胸郭に左右差がみられる状態です。
樽状胸:胸郭の前後径が拡大し、横径との差が小さくなっている状態です。

変形のある・なしだけでなく、呼吸に影響していないかも考えましょう。

触診では胸郭の広がりと左右差を見る

患者さんに深呼吸をしてもらい、胸郭が左右同じように広がるかを確認します。

吸気時に両側がほぼ同時に広がるかを見ます。
片側の動きが小さい場合は、胸水、無気肺、気胸、疼痛などを考える手がかりになります。
同時に、圧痛、腫脹、変形、皮下気腫の有無も確認します。
皮下気腫では、皮膚の下に雪を握るような感触を触れることがあります。

打診では左右の音を比べる

胸部を左右交互に打診し、同じ高さの音を比べます。

・清音:正常な肺野で聞かれる音です。
・濁音:肺炎、無気肺、胸水など、空気が少ない状態でみられることがあります。
・過共鳴音・鼓音:気胸や肺の過膨張など、空気が多い状態でみられることがあります。

打診音だけで疾患を決めず、呼吸音、胸郭の動き、症状、画像検査などと合わせて考えます。

聴診は左右交互に確認する

聴診器の膜面を温め、できるだけ衣類の上からではなく皮膚へ密着させます。
患者さんには、口を少し開けて普段よりやや深く、ゆっくり呼吸してもらいます。
はじめに気管上で気管音を聴き、次に前胸部の第2肋間胸骨縁周囲で気管支肺胞音を聴いてから、肺野全体を確認します。
前面と背面を上から下へ進み、左右の同じ高さを交互に聴きます。
1か所につき、吸気から呼気まで1呼吸以上を聴取します。
背面では肩甲骨の上を避け、肺底部まで確認します。

正常な呼吸音

・気管音:頸部の気管上で聴取します。高く大きい音で、吸気と呼気がはっきり聞こえます。
・気管支肺胞音:前胸部上部や肩甲骨間部などで聴取します。気管音と肺胞音の中間で、吸気と呼気がほぼ同じ程度に聞こえます。
・肺胞音:肺野の大部分で聴取します。低くやわらかい音で、吸気が長く、呼気は短く小さく聞こえます。

本来聞こえる場所と異なる部位で気管支系の音が強く聞こえる場合は、肺炎や肺うっ血などを考える手がかりになります。

異常な呼吸音

・呼吸音の減弱・消失:換気量の低下、気道の閉塞、胸水、気胸などでみられることがあります。全肺野か一部か、左右差があるかを確認します。
・呼吸音の増強:代償性に換気量が増えている場合や、気道の一部が狭くなっている場合にみられます。
・呼気延長:呼気が吸気より長く、吐き出しに時間がかかる状態です。気管支喘息やCOPDなど、気道が狭くなる病態でみられることがあります。
・気管支呼吸音化:末梢の肺野で、呼気が強くはっきり聞こえる状態です。肺炎や肺うっ血などで、気管支の音が胸壁まで伝わりやすくなった場合にみられます。

副雑音

・ウィーズ:高い「ヒューヒュー」「ピーピー」という連続音です。呼気に強く聞こえることが多く、気管支喘息、COPD、気道狭窄などでみられます。
・ロンカイ:低い「グーグー」「ゴロゴロ」という連続音です。呼気に強く聞こえることが多く、太い気道の狭窄や分泌物の貯留などでみられます。
・ファイン・クラックル:細かい「パリパリ」「チリチリ」という断続音です。吸気後半に聞こえ、間質性肺炎、肺水腫、肺炎などでみられます。
・コース・クラックル:粗い「ブツブツ」「ゴロゴロ」という断続音です。吸気から呼気に聞こえ、肺うっ血、気管支炎、分泌物の貯留などでみられます。
・胸膜摩擦音:雪を踏むような、こすれる音です。吸気と呼気に聞こえ、胸膜の炎症でみられます。

副雑音を記録するときは、音の名称だけでなく、右か左か、上肺野か下肺野か、吸気か呼気か、咳や体位で変化するかを書きます。

吸気時に頸部で強い高調音が聞こえるストライダーは、上気道狭窄を示すことがあります。
呼吸困難を伴う場合は緊急性があります。

なにが起きているかは組み合わせて考える

たとえば、右下肺野で胸郭の動きが小さく、打診で濁音があり、呼吸音が弱い場合は、胸水や無気肺などを考える手がかりになります。

一方で、片側の呼吸音が弱く、打診で過共鳴音があり、突然の胸痛と呼吸困難がある場合は、気胸を疑う所見の組み合わせです。

まとめ

・視診では、呼吸の全体像、胸郭の形と動きを確認します。
・触診では、胸郭の広がりと左右差、圧痛、腫脹、変形、皮下気腫の有無を確認します。
・打診では、左右の同じ高さの音を比べ、清音、濁音、過共鳴音・鼓音の有無を確認します。
・聴診では、呼吸音の左右差、正常・異常な呼吸音、副雑音の有無と種類を確認します。
・一つの所見だけで判断せず、症状、バイタルサイン、検査結果と合わせて考えます。

参考文献

肺聴診|日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
呼吸器のフィジカルアセスメント|看護roo!
呼吸音と副雑音の分類|看護roo!

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