- 肺炎の観察は、肺実質の炎症から呼吸状態と全身状態をつなげて考える
- 肺炎では、炎症による酸素化低下と全身反応が同時に起こる
- 呼吸状態は、酸素化低下と呼吸仕事量の増加を評価する
- 咳と痰は、気道分泌物の増加と排痰能力から評価する
- 呼吸音は、他の所見と組み合わせて解釈する
- 発熱と炎症反応は、全身の感染反応と治療経過をみる指標
- 脈拍、血圧、意識、尿量から重症化の兆候を捉える
- 食事と水分は、呼吸状態と脱水・低栄養のリスクから考える
- 高齢者では、典型的な呼吸器症状が目立たないことがある
- 実習で優先して集める情報
- 観察所見を病態生理と結び付けてアセスメントする
- まとめ
- 参考サイト
- プレミアムプランのご案内
- エビデンスSearch(無料お試し版)のご案内
肺炎の観察は、肺実質の炎症から呼吸状態と全身状態をつなげて考える
肺炎の観察項目を整理するには、肺実質の炎症がガス交換、気道分泌物、全身の炎症反応にどのような影響を及ぼすかを理解することが重要です。
肺炎は、細菌、ウイルスなどの病原体によって肺実質、主に肺胞領域に急性の感染性炎症が生じる病態です。
肺胞周囲に炎症性滲出液や細胞成分が集積すると換気血流比の不均衡やシャントが生じ、酸素化が低下します。その結果、呼吸困難、頻呼吸、SpO2低下などがみられます。
実習では、発熱や咳を単独で記録するのではなく、呼吸状態、痰の排出状況、循環状態、意識状態、食事・水分摂取量の変化を合わせて評価します。
肺炎では、炎症による酸素化低下と全身反応が同時に起こる
病原体が肺実質に侵入すると肺胞や周囲の組織で炎症反応が生じます。
炎症によって肺胞内や間質に滲出液が貯留すると肺胞への換気と肺毛細血管の血流の対応が乱れ、十分な酸素化が得られにくくなります。
低酸素血症、発熱、気道分泌物の増加、呼吸仕事量の増加は、呼吸数増加、息切れ、頻脈、倦怠感、食欲低下などにつながります。
肺炎が重症化して感染による全身反応が強まると意識状態の変化、血圧低下、尿量減少などがみられることがあります。呼吸器症状だけでなく、全身状態の急な変化を捉えることが必要です。
呼吸状態は、酸素化低下と呼吸仕事量の増加を評価する
肺炎では肺胞領域の炎症により酸素化が低下し、頻呼吸や呼吸困難がみられることがあります。
呼吸数、呼吸の深さ、呼吸リズム、努力呼吸、会話時の息切れ、起坐呼吸の有無を確認します。呼吸数だけでなく、呼吸時の肩呼吸、鼻翼呼吸、陥没呼吸、発語の途切れなどから呼吸仕事量を評価します。
SpO2は経時的な推移を確認し、酸素投与中の場合は投与方法と流量を合わせて記録します。数値が保たれていても努力呼吸や呼吸困難感が強い場合があるため、数値だけで呼吸状態を判断しません。
咳と痰は、気道分泌物の増加と排痰能力から評価する
肺炎では炎症によって気道分泌物が増加し、分泌物を排出しようとして咳嗽が生じます。
咳の回数と強さ、痰の量、色、粘稠度、臭気、血痰の有無、本人の力で喀出できているかを確認します。
痰の量や色だけで原因微生物や重症度を判断することはできません。ただし、排痰不良によって分泌物が貯留すると気道閉塞や無気肺を介して換気が低下し、呼吸状態が悪化することがあります。
咳嗽力の低下、疲労、疼痛、意識障害、嚥下障害などが排痰を妨げていないかを確認し、必要時は体位、呼吸介助、口腔内の清潔、吸引の適応を病棟の手順と指示に沿って検討します。
呼吸音は、他の所見と組み合わせて解釈する
肺炎では肺胞や気道内の分泌物、末梢気道の開閉などにより、副雑音が聴取されることがあります。
fine cracklesは、主に吸気終末に聴取される細かい断続性ラ音です。肺炎による肺胞周囲の炎症や無気肺などでも聴取されることがありますが、肺炎に特異的な所見ではありません。
coarse cracklesは、気道内の分泌物などにより聴取される比較的粗い断続性ラ音です。咳嗽や排痰の前後で変化する場合があるため、聴取部位、左右差、呼吸相、排痰後の変化を確認します。
呼吸音だけで病態を決めつけず、呼吸数、SpO2、咳・痰、胸部画像、体温、治療経過と合わせて評価します。
発熱と炎症反応は、全身の感染反応と治療経過をみる指標
肺炎では感染に対する全身の炎症反応として、発熱、悪寒、発汗、倦怠感、食欲低下などがみられます。
体温の推移、悪寒、発汗、皮膚の乾燥、倦怠感の程度を確認し、抗菌薬などの治療開始後に全身状態がどう変化しているかを評価します。
白血球数やCRPは炎症の程度や経過をみる参考になりますが、単独の値だけで重症度や治療効果を判断しません。呼吸状態、循環状態、画像所見、症状の経過と合わせて解釈します。
脈拍、血圧、意識、尿量から重症化の兆候を捉える
発熱、低酸素血症、脱水、呼吸困難による交感神経の活性化などにより、脈拍が増加することがあります。
脈拍数とリズム、血圧、皮膚の冷感、発汗、末梢循環を確認します。頻脈や血圧低下がみられる場合は、呼吸状態、発熱、脱水、感染による循環不全などとの関連を考えます。
意識状態の変化は、低酸素血症だけでなく、感染による全身状態の悪化、脱水、電解質異常、薬剤などが関与することがあります。ぼんやりしている、会話がかみ合わない、反応が遅いなどの変化を、JCSまたはGCSと合わせて評価します。
尿量は循環血液量や腎灌流の変化を反映することがあります。飲水量、点滴量、発汗、排尿回数、時間尿量や24時間尿量を合わせて確認します。
食事と水分は、呼吸状態と脱水・低栄養のリスクから考える
発熱や頻呼吸が続くと不感蒸泄が増え、食欲低下や呼吸困難によって飲水・食事摂取が進みにくくなることがあります。
食事摂取量、水分摂取量、口腔内の乾燥、尿量、体重、皮膚の状態を確認し、脱水や栄養状態の悪化を早期に捉えます。
食事中に息切れ、むせ、咳嗽、疲労がみられる場合は、食事姿勢、一口量、休憩の必要性、食事時間を確認します。嚥下障害が疑われる場合は、自己判断で食事形態を変更せず、指示や病棟の手順に沿って評価につなげます。
高齢者では、典型的な呼吸器症状が目立たないことがある
高齢者の肺炎では、発熱、咳嗽、喀痰などの典型的な症状が目立たず、食欲低下、活動量低下、脱水、ふらつき、せん妄、反応性の低下などが先にみられることがあります。
「いつもより食べない」「起きていられない」「歩けなくなった」「会話が減った」などの生活機能の変化を、基準となる普段の状態と比較して確認します。
高齢者の意識状態や活動量の変化は肺炎に特異的ではありません。尿路感染症、薬剤、脱水、脳血管障害なども含めて原因を考え、バイタルサイン、呼吸状態、検査結果、既往歴と統合して評価します。
実習で優先して集める情報
・呼吸状態:呼吸数、SpO2、努力呼吸、呼吸困難感、会話の様子、酸素投与の方法と流量
・咳と痰:咳嗽力、痰の量、色、粘稠度、喀出状況、血痰の有無
・呼吸音:副雑音の種類、聴取部位、左右差、排痰前後の変化
・感染と全身状態:体温、悪寒、発汗、脈拍、血圧、意識状態、倦怠感
・水分と栄養:食事・水分摂取量、口腔内乾燥、尿量、体重、入出量バランス
・検査と治療経過:白血球数、CRP、胸部画像、喀痰検査、抗菌薬開始後の症状とバイタルサインの変化
観察所見を病態生理と結び付けてアセスメントする
肺炎のアセスメントでは、「呼吸数が多い」「痰が多い」と所見を並べるだけでは不十分です。肺実質の炎症が酸素化や排痰にどのように影響しているかを考えます。
たとえば「肺実質の炎症により酸素化が低下し、SpO2低下と頻呼吸、会話時の息切れがみられる。呼吸仕事量の増加による疲労と呼吸状態の悪化が懸念されるため、呼吸数、努力呼吸、SpO2の推移、酸素投与条件を継続して確認する」と記載すると所見と観察の目的がつながります。
また「咳嗽力が低下し粘稠な痰を自力で喀出できていない。分泌物貯留による換気低下や無気肺のリスクを考え、痰の性状、呼吸音、SpO2、排痰後の呼吸状態を確認する」と記載すると排痰援助の必要性を判断しやすくなります。
ただし、呼吸数増加、SpO2低下、意識変化は肺炎以外でもみられます。既往歴、心不全や慢性呼吸器疾患の有無、治療内容、発症からの経過を合わせて総合的に判断します。
まとめ
肺炎では、肺実質の炎症によって酸素化が低下し、咳、痰、呼吸困難、頻呼吸、発熱、倦怠感などが生じます。
観察では、呼吸数やSpO2だけでなく、呼吸仕事量、排痰状況、呼吸音、循環状態、意識状態、水分・栄養状態を経時的に確認します。
病態生理から症状、観察、看護につなげて考えることで、急な悪化の兆候を捉え、根拠のある実習記録につなげやすくなります。
参考サイト
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