研究倫理(登録したやつ3章)

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3章-1

そうだ,この章では,“研究費”について学習します。まずは,事例を見てみましょう。

 

科学研究を行っていく上で,額の多寡はあれ「研究費」は不可欠なものであり,科学者にはこれを適切に使っていくことが求められます。科学者がすべて使いたいように自由に使えばよいというものではありません。

しかし,「研究費では購入できない物品を購入したい」,「物品の購入にいちいち手続きが必要で時間がかかる」,「会計年度をまたいだ研究費の処理がしにくい」などの理由から,ルール違反をするケースがみられます。

納品確認の重要性が指摘されるようになって,検収体制がより整備されてきたので,最近では新規の事案は少ないようですが,時折,ビックリするような額の預け金をしていた話が聞こえてきますよね。今切り抜いてもらっている新聞記事もその一つです。
今回の事例は違反行為ですが,その目的は私的なものではなく,あくまでも研究のためですよね?

 

たしかに亘理さんの言うとおり,A教授は研究費を私的に利用しようとしたわけではありませんが,
購入していない物品を購入したかのように装って代金を支払うという,いわゆる架空発注はルール上認められていませんから,
私的流用の有無にかかわらず一律に不正使用として取り扱われます。
また,研究費の使用年度を偽るのも問題です。

 

たとえ研究に使用しても,架空請求した金額に加算金も加えた金額の返還を求められるのですね。

 

今回の事案では,私的流用はなかったのですが,もし,あった場合には,もっと処分は,重くなります。
国からは,最長10年の競争的資金への申請及び参加資格制限があり,懲戒解雇をはじめ,退職していた場合には,退職金の返還を求められた事例もあります。
さらには,実際に,刑事告訴され,逮捕,勾留,起訴され,懲役刑の判決を受けた事例もあります。

 

科学者が犯罪者に…怖い話ですね。

 

本当に怖いですね。
だからこそ,それぞれの大学などでコンプライアンス教育を行い,不正が科学者本人に重大な影響を及ぼすことについて理解を促す取組などが重要となるのです。

 

なるほど。
そのような取組が,科学者を守り,科学者が安心して研究できる環境づくりにつながるのですね。

 

そのとおり。
それぞれの大学などでは,研究費の適切な使用を確保するため,研究費の管理・監査の体制整備に係る取組を行っていて,例えば,研究費の適切な使用に関する説明会や,パンフレット等の作成を通じたルール等の周知などを行っています。

 

A教授は,そうした取組を通じて,今のルールがどのようになっているのかを正しく理解していたらよかったのですね。

 

今回のA教授の事例では,着任して半年ということで,そういった説明会の機会がなかったかもしれません。
でもそれで免責になるかというと,それでは済まないのですよ。なぜなら,公的研究費を使うにあたってはお金の使い方を含むルールの説明を受けているはずなんです。
また,この事例は,架空請求による預け金が問題となりましたが,大学のルールとして前払いの制度があれば,前払いも可能な場合もありますので,大学の事務局に相談するといいでしょう。
繰り返しになりますが,お金の使い方で困ったことがあったら,大学の事務局に相談するのが一番。生兵法はケガのもとと言いますが,私たちは研究と教育のプロ,お金のことは事務局がプロなんです。

■研究費を適切に使用する【グリーンブック:第Ⅵ章第1節】

科学研究を行っていく上で,「研究費」は不可欠なものであり,科学者にはこれを適切に使っていくことが求められる。研究費の使用には,一定のルールがあり,これは,公的な研究費制度だけでなく,民間財団からの助成金,民間企業からの寄付金や受託研究など,研究に使われるあらゆるお金についていえることである。

■公的研究費の使用に関するルールの理解
【グリーンブック:第Ⅵ章第2節第1項】

公的研究費を用いた研究を実施する場合は,研究費が適切に使用され,研究目的が達成されるよう,使途,事務手続き,管理方法等が規定されたルールがある。

助成機関や研究機関では,科学者が研究を実施するにあたり,最低限把握する必要がある内容等について,説明会の開催やパンフレットの作成等を通じて公的研究費の使用に関するルールの周知を図っている。科学者はこういった機会に積極的にかかわり,公的研究費の適切な使用に関するルールを理解することが大切である。

■公的研究費の使用に関するルールの理解
【グリーンブック:第Ⅵ章第2節第1項】

ルールの中には,年々改正が行われるものもあるため,何年か前に一度学んだからよいというのではなく,定期的に説明会に参加したり,あらためて最新のパンフレットを読み直すことも必要である。ルールの解釈や運用などについてよく分からない点がある場合は必ず研究機関の事務担当者に相談することが重要である。

■公的研究費における不正使用の事例【グリーンブック:第Ⅵ章第3節】
事例紹介① 架空発注と預け金による不正
架空発注により業者に預け金を行う行為は不正使用に該当する。

不正発生の要因分析
・使用用途,使用年度に関らず,研究費を自由に使用したかった(動機)
・発注から納品までを研究者自ら行うシステム(機会)
・規則に対する遵守意識および公的資金であるという認識の欠如(正当化)

 

■公的研究費における不正使用の事例【グリーンブック:第Ⅵ章第3節】
事例紹介① 架空発注と預け金による不正
架空発注により業者に預け金を行う行為は不正使用に該当する。

措置
・補助金の返還命令
・競争的資金への応募参加の制限
・関係業者に対して一定期間の取引停止
・懲戒処分等機関内での人事処分

 

3-2

レッスン1では,架空発注に関する不正事例を学習しました。
物品の購入以外にも,研究には費用が発生します。

 

私も学部生のとき,教授の研究をお手伝いして謝金をいただいたことがあります。
こういったお金も,研究に必要ですよね?

 

そのとおりです。このレッスンでは,人件費に関わる不正の事例を見てみましょう。

 

勤務していない分の謝金を支払わせるという行為は不正でしかありません。
さらに,こうしたことを学生の面前で行うということは,誠実な科学者の育成の観点からしても好ましくない行為だと考えるべきです。

かつては学生に旅費が出せなかった,出しにくかったので,こういう事例が見られましたが,研究費の使い勝手は改善されてきています。
例えば,科研費では,研究課題の遂行に必要であれば,大学院生に出張旅費を支給することが認められるようになっています。

 

今回の事例では,学生が大学に相談したことで明るみになりましたが,もし彼女が黙っていたら真相は闇の中だったのでしょうか。

 

そうならないよう,勤怠管理を研究室任せにするのではなく,事務部門が勤務実態を把握するなど,不正の発生の可能性を最小にする努力が必要ですね。

 

■公的研究費における不正使用の事例【グリーンブック:第Ⅵ章第3節】
事例紹介② 架空人件費(謝金)による不正
研究協力者に支払う給与について,実際より多い作業時間を出勤簿に記入して請求することは不正使用に該当する。

不正発生の要因分析
・使用用途に関らず,研究費を自由に使用したかった(動機)
・勤怠管理が研究室任せで,事務部門が勤務実態を把握していない(機会)
・規則に対する遵守意識および公的資金であるという認識の欠如(正当化)

 

■公的研究費における不正使用の事例【グリーンブック:第Ⅵ章第3節】
事例紹介② 架空人件費(謝金)による不正
研究協力者に支払う給与について,実際より多い作業時間を出勤簿に記入して請求することは不正使用に該当する。

措置
・補助金の返還命令
・競争的資金への応募資格の制限
・懲戒処分等機関内での人事処分

 

■不正な使用に係る公的研究費の返還【グリーンブック:第Ⅵ章第4節第1項】

助成機関は,研究機関において科学者による研究費の不正な使用があった場合は,研究機関から最終報告書の提出を受け,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律や委託契約書等に基づき,不正に使用された金額の返還を求める。

返還については,不正とされた全額を自らが使用したものではなく,例えば,研究室の学生の研究活動に使用していたといった事情があったとしても,返還の責任は公的研究費の研究代表者にかかる。

また,たとえ使用目的自体には問題はなかったとしても,研究費の会計ルールなどから不正とされれば,返還しなければならないことになる。

 

■競争的資金制度における応募資格の制限
【グリーンブック:第Ⅵ章第4節第2項】

競争的資金制度において不正な使用を行った科学者は,競争的資金制度への応募資格を一定期間(1~10年)制限される。この措置は,競争的資金制度の所管府省において申し合わせをした「競争的資金の適正な執行に関する指針」〔2005(平成17)年9月9日〕に基づく。

この措置は,例えば科研費における不正によるものであっても,科研費以外の競争的資金制度を含め,他府省すべての競争的資金制度の応募資格に制限が適用されるものである。

 

■競争的資金制度における応募資格の制限
【グリーンブック:第Ⅵ章第4節第2項】

また,例えば研究費の配分を受けた科学者本人が不正な使用をしていなくても,研究の補助をしていた者が研究費を不正に使用したような場合には,応募資格制限の対象とされることがある。

 

■研究機関内における処分【グリーンブック:第Ⅵ章第4節第3項】

科学者が研究費の不正な使用を行った場合は,科学者が所属する機関の規程に基づき,科学者に対して懲戒処分がなされることがある。不正事案が特に悪質な場合などは,研究機関が当該科学者を刑事告発し,裁判で刑事罰が科せられることもある。

例えば,あたかも働いたようにみせかけて謝金や給与を受け取っていた場合,それが研究機関をだましていたに等しいような悪質なケースとみなされれば,詐欺罪が適用されることもある。

 

■研究機関内における処分【グリーンブック:第Ⅵ章第4節第3項】

さらに,研究機関によっては,規程に基づき,当該不正事案に関わった科学者の氏名等を公表する場合もある。

このように,研究費の不正な使用をした場合には,研究費の返還や応募制限のペナルティだけでなく,研究機関においてもこのような処分を受ける可能性があることに留意する必要がある。

3-3

このレッスンでは,架空の旅費による不正について学習します。

旅費については,物品購入の費用や人件費よりも不正を抑制しやすそうな気がします。

旅費の申請手続では,うちの大学のローカルルールだと思いますが,飛行機の搭乗券半券や領収書だけでなく,用務遂行の確認のためにスマホなどで現地での写真を残すことを奨励しています。

不正が起きないような仕組みというよりも,実験ノートや資料の保存と同じように,身を守る術ではないでしょうか。

そうですね。各機関において,色々な対策が取られています。
逆に言えば,そういった制度の網の目をくぐるようにして不正が行われるとすれば,大変悪質な不正であるといえるでしょう。
それでは,事例を見てみましょう。

もし出張日程の変更が必要だったにもかかわらず,故意に変更していなかったことが後でわかったらどうなりますか?

故意に,実際に要した金額以上の経費を申請することや不要な経費を申請することは水増し請求であり,不正使用に該当してしまいます。

故意にやっていたら,弁解の余地はないですね。

そうです。故意にやることは全くあってはならないことですが,ルールを正しく理解せずに間違った手続を行ってしまうことも避けなくてはいけません。

なるほど。科学者にルールを正しく理解してもらうためには,コンプライアンス教育が重要になってきますね。

そうですね。大変重要です。
コンプライアンス教育では,ルールを伝えることも必要ですが,不正が起こす影響についても伝えなくてはいけません。不正が起こす影響は,不正を行った本人のみに留まりません。

こうした不正の手口が発生すると,規制はますます厳しくなるでしょう。
そしてそれは所属大学だけにとどまらず,厳しくなった規制を他の大学が参照してしまうこともあるわけです。それにより,他の科学者の研究活動に必要以上の束縛と負担がかかってしまうことも考えられます。

 

少数の科学者の不正であっても,科学研究全体に大きな悪影響を与える恐れがあると考えないといけないですね。

 

そのとおり。
一度厳しくしたルールを元に戻すのは至難の業なのです。

 

まとめ

■公的研究費における不正使用の事例【グリーンブック:第Ⅵ章第3節】
事例紹介③ 架空旅費・交通費による不正 実際に要した金額以上の経費の申請は水増し請求であり不正使用に該当する。

不正発生の要因分析
・使用用途にかかわらず,研究費を自由に使用したかった(動機)
・出張が申請どおりに行われたかどうかのチェック体制の不備(機会)
・規則に対する遵守意識および公的資金であるという認識の欠如(正当化)

 

■公的研究費における不正使用の事例【グリーンブック:第Ⅵ章第3節】
事例紹介③ 架空旅費・交通費による不正 実際に要した金額以上の経費の申請は水増し請求であり不正使用に該当する。

措置
・補助金の返還命令
・競争的資金への応募資格の制限
・懲戒処分等機関内での人事処分

 

■研究費についてのまとめ【グリーンブック:第Ⅵ章第5節】

研究費の不正な使用は,研究面の不正と同様,科学研究への信頼や夢を傷つけるものであると共に,科学研究予算の減にもつながりかねない。一部の科学者の行為であったり,また,不注意であったとしても,科学研究界全体にも大きな悪影響を与えてしまうということを認識し,研究費の適切な使用を日頃から心がけることが重要である。

ルールは研究を縛るためにあるものではない。ルールには理由や背景があるものである。研究費のルールについてやみくもに覚える必要はなく,また,財源等によって異なるものもあるので,事務担当者に聞いたり,助成機関に尋ねたりして,きちんと理解すれば,研究をスムースに進めることができる。

また,研究活動がより効率的・効果的に行えるように,研究機関内で事務担当者を含めて相談したり,助成機関にルールの見直しを求めていく姿勢も大切である。平成29年3月24日付けで,文部科学省から,「国立大学法人及び大学共同利用機関法人における研究費の管理・使用について」が事務連絡された。
こうしたことも,科学者の責任の一つといえる。


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