※胃がんは、進行度や治療内容・治療段階によって必要な看護計画が異なります。
本記事では、さまざまな治療内容・治療段階に対応できるよう、必要な項目を幅広く掲載しています。
担当する患者さんの状態や治療内容に合わせて、該当する項目を選択して使用してください。
定義
非効果的健康管理とは、疾患によって医療処置・症状の管理・身体機能の維持などを必要とする患者やその家族が必要な処置やケアを行うことが困難あるいは不十分であり、望む生活ができない状態をいう。
「非効果的健康維持」と「非効果的健康管理」の使い方の違い
「非効果的健康維持」は喫煙、運動不足や過食・偏食などの不健康な生活習慣を変えたいと願っている個人に用いられ、発病を予防するための1次予防の場合に使用する。
「非効果的健康管理」は、すでに疾患があり、治療や生活調整を継続するための知識・技術・支援が必要な患者に使用する。
看護計画
疾患:
既往歴:
治療内容:
目標
身体の変化や消化状態の変化を理解し、無理のない生活を行えるよう取り組める
胃がんに関連した栄養管理や生活上の注意点について、必要な知識・技術を習得し、実践できる
体調の変化や異常なサインに気づき、適切に対処し、必要に応じて医療者に相談できる
疾患や治療に伴う不安を表現できる
家族、医療チーム、社会資源など必要な支援を受けられる
O-P
1.検査データ
-上部消化管内視鏡検査(生検・病理診断)
-病理組織型、病期(ステージ)、病変部位、切除の可能性
-切除不能の進行・再発胃がんで一次薬物療法を検討する場合:HER2、PD-L1(CPS)、CLDN18.2(CLDN18タンパク免疫染色)、MSI/MMRなどの検査結果
-造影CT(進行度、転移の評価)
-血液検査:TP、Alb、Hb、WBC、CRP、AST、ALT、LDH、T-bil、BUN、Cr、Na、K、Clなど
-腫瘍マーカー:CEA、CA19-9など
-必要時:上部消化管造影検査、MRI、PET、超音波内視鏡、審査腹腔鏡など
2.ADL・IADL
3.認知力、理解力
4.バイタルサイン
5.胃がんの症状の有無、程度
-無症状
-上腹部の不快感、胃部膨満感
-腹痛、心窩部痛
-食欲不振、食後の早期満腹感、体重減少
-胸やけ、おくび(げっぷ)、悪心・嘔吐
-黒色便(タール便)
-吐血
6.胃がんの進行に伴う合併症の有無
-貧血
-腫瘍出血
-通過障害
-穿孔
-栄養障害
-水・電解質異常
7.食事摂取量
8.水分摂取量
9.水分出納バランス
10.体重、体重の変化
11.排尿状況
12.排便状況
13.安静度、活動量、運動量
14.睡眠状況
15.治療内容
-内視鏡的治療(内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)など)
-外科的治療(胃切除、リンパ節郭清、胃再建術など)
-薬物療法(化学療法、分子標的薬、免疫療法など)
-緩和目的などで実施される放射線療法
-栄養療法、支持療法
16.治療別の副作用・合併症の有無
-内視鏡治療後の出血、穿孔
-手術後の出血、縫合不全、膵液漏、腹腔内膿瘍、感染、腸閉塞
-胃切除・再建後の小胃・無胃症状、ダンピング症候群、逆流性食道炎、貧血、体重減少、骨粗しょう症
-薬物療法の副作用(骨髄抑制、消化器症状、口内炎、末梢神経障害、皮膚症状、肝・腎機能障害、免疫関連有害事象など)
-放射線療法を受ける場合の副作用(照射部位や範囲に応じた皮膚炎、悪心・嘔吐、下痢、倦怠感など)
17.服薬状況
18.服薬管理状況
19.疾患について誰にどのように説明されているか
20.疾患、治療に対する受け止め方
21.疾患についての理解
22.治療についての理解
23.不安に思っていること
24.ストレスの有無、対処方法
25.セルフマネジメントの内容
-セルフマネジメントに対する理解度
-患者が行っている行動が正しいか
26.生活状況
-1日の過ごし方
-食生活(回数など)
-喫煙、飲酒の有無
-運動量、運動習慣
-自宅・地域の環境
-職業
-経済状況
27.家族のサポートの有無、状況
28.家族の知識、理解
29.家族の不安
30.ソーシャルサポート(社会的支援)の活用状況
-情緒的サポート:共感や愛情の提供
-道具的サポート:形のある物やサービスの提供
-情報的サポート:問題の解決に必要なアドバイスや情報の提供
-評価的サポート:肯定的な評価の提供
T-P
1.ADLに合わせて環境を調整する
2.患者の思いに寄り添い、尊重した態度で接する
3.患者の思い、不安に思っていることを傾聴する
4.患者の発言、表情や行動で気になったことは理由を確認する
5.ADLに応じて必要な動作を介助する
-できることは自身で行うように声掛けする
-できないことは介助する
6.各症状に対するケアを行う
-上腹部の不快感、胃部膨満感に対するケアを行う
・症状の程度、出現時間、食事との関連を確認する
・腹部を圧迫しない衣服や安楽な体位に調整する
・食事量を調整し、少量ずつ摂取できるように支援する
-腹痛、心窩部痛に対するケアを行う
・疼痛の部位、程度、性質、持続時間、増悪・軽減因子を確認する
・安楽な体位に調整し、必要に応じて医師の指示に基づく鎮痛薬を使用する
・突然の強い腹痛や腹膜刺激症状がある場合は直ちに医師へ報告する
-食欲不振、食後の早期満腹感、体重減少に対するケアを行う
・食事は少量・頻回とし、食べられる時間帯や嗜好に合わせて調整する
・通過障害の有無や消化状態に応じて、少量でもエネルギーやたんぱく質を確保しやすい食品や栄養補助食品を取り入れられるように調整する
・食事摂取量の低下や体重減少が続く場合は、医師や管理栄養士と連携し、栄養療法の必要性を検討する
-胸やけ、おくび(げっぷ)、悪心・嘔吐に対するケアを行う
・一度に多く食べることを避けてゆっくり摂取し、食後すぐの臥位を避ける
・胸やけがある場合は上半身を挙上する
・悪心がある場合は食事のにおいや量を調整し、食べられる物を少量ずつ摂取できるように支援する
・嘔吐時は誤嚥を予防できる体位をとり、吐物の量・色・性状を確認して口腔内を清潔にする
・症状が持続・増悪する場合や頻回の嘔吐、血性吐物がある場合は医師へ報告し、指示に基づいて制吐薬の使用や飲食内容を調整する
-黒色便(タール便)に対するケアを行う
・黒色便(タール便)がある場合、便の色、形状、回数を記録し、状況を把握する
・黒色便(タール便)が見られた場合、バイタルサインを測定し、医師へ報告する
-吐血に対するケアを行う
・吐血時は気道確保と誤嚥予防を優先し、意識状態に応じて側臥位などの安全な体位をとり、直ちに医師へ報告する
・吐血の量、色、性状を記録し、異常があればすぐに医師に報告する
7.合併症に対するケアを行う
-貧血に対するケアを行う
・顔色、眼瞼結膜、倦怠感、めまい、動悸、息切れの有無を確認する
・活動と休息のバランスを調整し、めまいがある場合は転倒を予防する
・貧血症状の増悪や出血を疑う所見がある場合は医師へ報告する
-胃穿孔に対するケアを行う
・急性腹症の症状(腹痛、腹膜刺激症状)を観察し、異常があればすぐに医師に報告する
・安静を保ち、必要に応じて輸液の準備、管理を行う
-胃出口部狭窄などの通過障害、腸閉塞に対するケアを行う
-栄養障害に対するケアを行う
・食事摂取量、体重の変化、血液検査データを継続して確認する
・口腔内の状態や症状に応じて、摂取しやすい食事内容や食事形態へ調整する
・医師や管理栄養士と連携し、栄養補助食品や経腸・静脈栄養の必要性を検討する
-水、電解質の異常に対するケアを行う
・水分出納バランスを測定し、体重、尿量、浮腫の有無を観察する
・血液検査の結果を確認し、医師の指示に基づいて補液を実施する
・医師や管理栄養士と連携して食事内容の調整を検討する
-(胃切除・再建後)ダンピング症候群の予防的ケアを行う
・少量・頻回の食事を、患者の摂取量や症状に合わせて調整する
・よく噛んでゆっくり食べるように支援する
・水分で固形物を流し込む食べ方を避け、必要な水分量は食間も含めて確保できるように調整する
・食直後の運動を控え、症状に応じてゆったり過ごせるように支援する
-胃切除・再建後にダンピング症候群が出現した場合は、以下の対応を行う
・早期症状出現時は、安静を保ち症状が落ち着くまで様子を観察する
・後期症状(低血糖症状)出現時は、医師指示のブドウ糖や飴などを摂取してもらう
8.確実に服薬できるように内服管理を行う
9.内服を自己管理できるように方法を検討する
10.不安や抑うつが強い場合、専門科の受診を検討する(医師へ相談する)
11.同じような体験を持つ患者と話ができるように働きかける(ピアサポート)
12.疾患に対する注意点や自己管理の方法についてのパンフレットを作成する
13.家族が同一の知識を得られ対応できるように、家族全員に説明できる場をつくる
14.必要時は在宅医療が受けられるように多職種や地域と連携する
15.退院前カンファレンスを開催する
-患者や家族がニーズや不安なことなどを表出できるように支援し、必要時は代弁する
-退院指導の内容を地域の支援者に伝える
16.ソーシャルサポート(社会的支援)を紹介する
E-P
1.胃がんについてパンフレットを用いて以下を説明する
-胃がんの病態、現在の病状
-治療方法、目的、期間
-治療の副作用、セルフモニタリングの方法
-日常生活の注意点
・内服管理
・自己判断で内服を中止しない
・強い腹痛、嘔吐、黒色便など、いつもと違う症状があればすぐに受診する
・胃切除後や消化状態に応じて、食事は少量・頻回に分けて摂取する
・食事によって症状が出現する場合は、症状との関連を確認し、食品の種類や摂取量を個別に調整する
・早期ダンピング症状が出現した場合は、症状が落ち着くまで安静にする
・後期ダンピング症状が出現した場合は、医療者から指示された方法で糖分を補給する
・胃切除後は貧血、体重減少、骨粗しょう症などについて定期的な検査と経過観察を受けること
・胃全摘後は、数年後にビタミンB12不足による貧血が生じる場合があるため、血液検査と必要な補充療法を継続すること
・体重を定期的に測り、急激に減る場合は病院に相談する
・規則正しい生活
・十分な栄養
・十分な休息
・ストレスケア
・周囲の人や職場からのサポートの必要性
2.かかりつけ医の必要性について説明する
3.定期的な受診の必要性について説明する
4.ソーシャルサポート(社会的支援)の活用方法について説明する
5.災害時の対応について説明する
-内服薬の予備、お薬手帳、治療内容を準備する
-主治医、薬局、がん相談支援センターの連絡先を確認できるようにしておく
-強い腹痛、持続する嘔吐、発熱、黒色便や吐血などがある場合の連絡先と受診方法を確認する
参考サイト
胃がんについての詳しい解説―胃がんの診断から治療(手術、化学療法)まで― 近畿大学奈良病院
−胃がんの原因、診断から治療(手術〜化学療法、腹腔内化学療法)まで−近畿大学医学部 外科学教室
おなかの病気・がんを知る 胃がんの解説と症状 おなかの健康ドットコム
胃がん がん情報サービス
胃がん 秋田大学大学院医学系研究科消化器外科学講座
胃がん患者さんへの看護のポイントは?病態生理や看護の実際まで徹底解説 レバウェル看護
<特集「栄養治療の新時代:多領域における課題と展望」> 上部消化管手術の周術期栄養管理 窪田 健他 京府医大誌 134(6),2025
ダンピング症候群は、胃の切除術後は常に注意をしないといけないものか? レバウェル看護
(13) 退院後に起こる問題と対処法 胃切除後症候群とは 日本臨床外科学会
(14-1) 胃切除後の食事のとり方 日本臨床外科学会
日本胃癌学会編 胃癌治療ガイドライン 医師用2018年1月改定【第5版】
患者用パンフレット 胃がんの治療と療養生活 第一三共株式会社(PDF)
胃癌治療ガイドライン 第7版|日本胃癌学会
胃がんについて|国立がん研究センター がん情報サービス
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