消化器系の症状には、腹部膨満感、腹痛、食欲不振、悪心・嘔吐、便秘、下痢などがあります。
消化器系の症状が見られたときは、症状の始まり方、経過、食事や排便との関係、随伴症状を合わせて確認します。

はじめに緊急性の高い変化を確認する
消化器症状が出現したときは、はじめに患者さんの全身状態を確認します。
・意識の変化、顔面蒼白、冷汗がないか
・血圧低下や頻脈がないか
・突然の強い腹痛や急速に悪化する痛みがないか
・腹部が硬く、動くと痛みが強くならないか
・吐血、黒色便、血便がないか
・嘔吐が続き、水分をとれない状態ではないか
・便やガスが出ず、腹部膨満や嘔吐がないか
突然始まった激しい腹痛、急速に悪化する痛み、意識の変化、循環不全を伴う場合は、速やかな報告を優先します。
腹部膨満感
腹部膨満感は、患者さんが「お腹が張る」と感じる自覚症状です。
見た目に腹部が膨らんでいる腹部膨隆とは一致しないことがあります。
確認する内容は次のとおりです。
・いつから始まり、急に強くなったか
・食事や時間帯との関係
・腹部膨隆や左右差
・腹痛、悪心、嘔吐の有無
・最後に排便と排ガスがあった日時
・腹囲、体重の変化
・腹部手術歴や腹水、便秘、腸閉塞などの既往
腹囲を測る場合は、体位、測定位置、呼吸の時期をそろえて経過を比べます。
仰臥位で膝を伸ばし、臍の高さに巻尺を水平に巻き、自然に息を吐いたところで測定します。
急な腹部膨満、排便・排ガス停止、嘔吐、持続する腹痛がそろう場合は、腸閉塞などの可能性があります。
また、呼吸が苦しいほど腹部が張る場合や腹部が硬い場合は腹膜炎などの重い病態の可能性があるため、速やかに報告しましょう。
腹痛
腹痛は、痛みだけでなく、始まり方や経過、随伴症状を合わせて確認します。
確認する内容は次のとおりです。
・いつから始まったか
・突然か、徐々にか
・間欠的か、持続的か
・同じ痛みか、強くなっているか
・痛む部位と範囲、移動や背中・肩などへの広がりの有無
・鈍い、差し込む、鋭い、波があるなどの痛みの性状
・疼痛スケールで確認した強さ、表情や動作への影響
・食事、排便、体動、体位との関係
・発熱、悪心・嘔吐、便秘、下痢、血便、黒色便、腹部膨満の有無
・腹部手術歴、使用している薬剤
突然の激しい腹痛、急速に悪化する痛み、腹部が硬い場合や、吐血、黒色便、血便、意識の変化、血圧低下、冷汗を伴う場合は、緊急性の高い病態や消化管出血などの可能性があるため、速やかに報告しましょう。
食欲不振
食欲不振は、食べたいという感覚が低下した状態です。
単に「食欲がない」で終わらせず、実際の摂取量と生活への影響を確認します。
確認する内容は次のとおりです。
・いつから始まったか
・普段と比べて何割程度食べられているか
・主食、副食、水分の摂取量
・食事のにおい、味、形態による違いの有無
・悪心、腹痛、腹部膨満、口腔内痛、嚥下困難がないか
・体重減少、筋力低下、倦怠感がないか
・抑うつ、不安、睡眠不足がないか
・治療、薬剤、便秘などとの関係
食べられそうな時間帯や好みを確認し、1回量を少なくして回数を分け、におい、温度、食形態を調整します。
悪心、口腔内痛、便秘などがある場合は、食欲を妨げている症状に応じたケアを行います。
食事や水分を十分にとれない状態が続く場合や体重減少、脱水徴候がある場合は報告し、栄養補助食品による栄養補給や補液による水分・電解質補給の必要性を検討します。
悪心・嘔吐
悪心は吐きそうな不快感、嘔吐は胃内容物などを口から排出することです。
確認する内容は次のとおりです。
・いつ始まったか
・食前、食後、内服後など悪心・嘔吐が起こるタイミングに規則性はあるか
・突然嘔吐したか、悪心が先行したか
・回数、嘔吐量、持続時間
・吐物の色、におい、未消化物、血液、胆汁様の液体がないか
・腹痛、頭痛、発熱、下痢、便秘を伴っていないか
・抗がん薬、抗菌薬、オピオイドなどとの関係
・尿量低下、口渇、皮膚や口腔内の乾燥がないか
悪心がみられた場合は、楽な体位に整え、腹部を締めつけないように調整します。においの強いものを避けて換気します。
食事は無理に勧めず、症状が落ち着いたときに少量ずつ摂取できるようにします。
嘔吐がみられた場合は、上体を起こすか顔を横に向け、必要に応じて吸引を準備します。特に意識が低下している患者さんや嘔吐を繰り返す患者さんでは、誤嚥と気道閉塞に注意します。
吐血、コーヒー残渣様の吐物、緑色の嘔吐物、便臭のある吐物、強い頭痛、意識の変化を伴う場合は速やかに報告しましょう。
便秘
便秘は、排便回数の減少だけでなく、硬便、強いいきみ、残便感、排便困難などを含む状態です。
確認する内容は次のとおりです。
・普段の排便習慣
・最後に排便した日時
・排ガスの有無
・排便回数、排便量、硬さ
・いきみ、残便感、肛門痛の有無
・腹痛、悪心、腹部膨満、食欲低下を伴っていないか
・食事、水分、活動量
・トイレの環境
・オピオイド、抗コリン薬、鉄剤などの使用
水分制限や食事制限の有無を確認したうえで、水分量や食物繊維の摂取、活動量、排便する時間を調整します。
便意を我慢せず、落ち着いて排便できる環境を整えます。
便秘が改善しない場合は排便状況を報告し、下剤の使用や調整を検討します。
下痢
下痢は、便の水分量が増えて軟便や水様便となり、普段より排便回数が増えた状態です。
確認する内容は次のとおりです。
・いつから始まったか
・1日の回数とおおよその量
・泥状便か、水様便か
・便の色
・血液、粘液の混入の有無
・腹痛、発熱、悪心、嘔吐を伴っていないか
・同じ食事をした人や同室者にも症状がないか
・抗菌薬、下剤、経管栄養などとの関係
・食事・水分の摂取状況
・口渇、尿量低下、頻脈、血圧低下、意識の変化の有無
水分制限の有無を確認し、水分と電解質を少量ずつ補給できるようにします。
食事は症状や指示に合わせて、消化しやすいものを少量ずつ摂取できるように調整します。
トイレまで安全に移動できるように環境を整え、必要に応じてポータブルトイレや便器を準備します。
排便後は肛門周囲をぬるま湯などでやさしく洗浄し、こすらずに水分を拭き取ります。
発赤、びらん、疼痛がある場合は、必要に応じて皮膚保護剤を使用します。
感染性の下痢が疑われる場合は、排泄物を扱うときに手袋を使用し、処理後は石けんと流水で手を洗い、施設の手順に沿って対応します。
頻回の水様便、血便、発熱、強い腹痛、脱水を疑う変化がある場合は、速やかに報告しましょう。
まとめ
・消化器症状では、始まり方、経過、食事や排便との関係、随伴症状を確認します。
・意識の変化、血圧低下、出血、激しい腹痛、排便・排ガスの停止を伴う場合は速やかに報告します。
参考文献
腹痛|済生会
食欲不振|済生会
吐き気・嘔吐|済生会
便秘|済生会
下痢|済生会
イレウス(腸閉塞)|済生会
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