- COPDの観察は、息を吐き出しにくい病態から考える
- COPDでは、気道病変と肺胞破壊によって気流閉塞が生じる
- 息切れは、肺過膨張と呼吸筋の負担増加によって起こる
- 咳と痰は、気道の慢性炎症と排痰能力から評価する
- SpO2は重要だが、単独ではCOPDの状態を判断できない
- 呼吸音と胸郭所見は、気道狭窄と換気低下の手掛かり
- 体重減少と易疲労感は、呼吸負荷と全身への影響から考える
- 急性増悪は、いつもの症状が急に悪化した状態として捉える
- COPDで優先して集める情報
- 治療は、禁煙を基盤に薬物療法と非薬物療法を組み合わせる
- 観察所見を病態生理と結び付けてアセスメントする
- まとめ
- 参考サイト
- プレミアムプランのご案内
- エビデンスSearch(無料お試し版)のご案内
COPDの観察は、息を吐き出しにくい病態から考える
COPDの観察項目を整理するには、気道の狭窄と肺胞の破壊によって、なぜ息切れ、痰、低酸素血症、体重減少が起こるのかをつなげて理解することが重要です。
COPDは、主にたばこ煙などの有害物質への長期曝露によって気道と肺実質に慢性炎症が生じ、持続する気流閉塞を示す呼吸器疾患です。
病態が進むと吸った空気を十分に吐き出せず肺内に空気が残るため、労作時の呼吸困難や活動耐容能の低下が生じます。
看護実習ではSpO2だけで判断せず、呼吸パターン、呼吸困難の程度、咳・痰、栄養状態、ADL、意識状態、急性増悪の兆候を合わせて評価します。
COPDでは、気道病変と肺胞破壊によって気流閉塞が生じる
COPDでは、気管支の慢性炎症によって気道壁が肥厚し、粘液分泌が増加して気道内腔が狭くなります。
同時に肺胞壁が破壊されて弾性収縮力が低下すると呼気時に末梢気道が閉じやすくなります。そのため、特に息を吐くときに空気の流れが妨げられます。
呼気が十分に行えない状態が続くと肺内に空気が残るエアトラッピングと肺過膨張が生じます。肺過膨張により横隔膜が働きにくくなり、呼吸筋の負担が増えるため、労作時の息切れにつながります。
気道病変と肺胞破壊の程度は患者さんによって異なります。症状、呼吸機能検査、画像所見、急性増悪の頻度を合わせて病態を評価します。
息切れは、肺過膨張と呼吸筋の負担増加によって起こる
COPDでは気流閉塞によって呼気時間が延長し、運動時には次の吸気までに十分な呼気を終えにくくなります。
運動時に肺内の空気がさらに残る動的肺過膨張が起こると吸気に使える余裕が少なくなり、少しの動作でも呼吸困難を感じやすくなります。
呼吸困難は安静時よりも歩行、入浴、更衣、食事、排泄などで現れやすいことがあります。どの動作で出現するか、休憩するとどの程度回復するかを具体的に確認します。
呼吸数、呼気時間、努力呼吸、口すぼめ呼吸、補助呼吸筋の使用、会話時の息切れを確認し、呼吸仕事量が増えていないかを評価します。
咳と痰は、気道の慢性炎症と排痰能力から評価する
気道の慢性炎症では、粘液分泌の増加や線毛機能の低下が生じ、咳嗽や喀痰がみられます。
咳の回数と強さ、痰の量、色、粘稠度、臭気、血痰の有無、自力で喀出できているかを確認します。
痰の増加や膿性痰への変化は、感染や急性増悪を疑う手掛かりになります。ただし、痰の色だけで感染の有無や原因微生物を判断することはできません。
疲労、筋力低下、意識状態の変化、嚥下機能の低下などが排痰を妨げていないかを確認し、必要時は体位、呼吸介助、口腔内の清潔、吸引の適応を病棟の手順と指示に沿って検討します。
SpO2は重要だが、単独ではCOPDの状態を判断できない
COPDでは換気血流比の不均衡や肺胞毛細血管床の減少により、低酸素血症が生じることがあります。
SpO2は酸素化の変化を把握するために重要です。安静時だけでなく、活動前後、食事中、排泄時、歩行時などの推移を、酸素投与の方法と流量を含めて確認します。
一方で、SpO2が保たれていても、呼吸困難感、努力呼吸、呼吸数増加、疲労、二酸化炭素貯留による意識状態の変化がみられる場合があります。SpO2は換気や二酸化炭素貯留を直接示す値ではありません。
呼吸状態が悪化した場合は、呼吸数、呼吸パターン、意識状態、血液ガス分析などを治療方針と合わせて評価します。酸素投与量の変更は自己判断で行わず、指示に従います。
呼吸音と胸郭所見は、気道狭窄と換気低下の手掛かり
COPDでは気道狭窄によって、喘鳴が聴取されることがあります。喘鳴の有無、呼吸相、聴取範囲、以前との変化を確認します。
気流が著しく低下している場合や肺過膨張が強い場合は、呼吸音が減弱して聴取されることがあります。呼吸音の減弱は重症度を単独で示す所見ではないため、呼吸数、SpO2、努力呼吸、意識状態と合わせて評価します。
肺過膨張が持続すると樽状胸郭がみられることがあります。また、胸鎖乳突筋や斜角筋などの補助呼吸筋を使用している場合は、呼吸仕事量の増加を示す所見として確認します。
体重減少と易疲労感は、呼吸負荷と全身への影響から考える
COPDでは呼吸仕事量の増加によってエネルギー消費が増え、呼吸困難や食欲低下によって食事摂取量が低下しやすくなります。
慢性炎症、活動量低下、筋肉量の減少も重なると体重減少、低栄養、サルコペニア、易疲労感につながることがあります。
体重、BMI、食事摂取量、食事中の息切れ、食事時間、口腔内の状態、筋力、歩行やセルフケアへの影響を確認します。
体重減少をCOPDだけの影響と決めつけず、悪性腫瘍、心不全、うつ状態、消化器症状、薬剤の影響なども含めて全身状態を評価します。
急性増悪は、いつもの症状が急に悪化した状態として捉える
COPDの急性増悪では、呼吸困難、咳嗽、痰の量や性状が数日以内に悪化し、治療の追加や変更が必要になることがあります。
気道感染が急性増悪の主な誘因ですが、大気汚染、心不全、肺塞栓症、気胸など、症状悪化の背景がCOPD以外にある場合もあります。
安静時の呼吸困難、会話困難、努力呼吸の増加、呼吸数増加、チアノーゼ、意識状態の変化、発熱、脈拍増加、SpO2の急な低下は、速やかな報告が必要な所見です。
急性増悪を疑う場合は、痰の変化、呼吸状態、バイタルサイン、意識状態、食事・水分摂取、服薬や吸入の実施状況、感染徴候を経時的に確認します。
COPDで優先して集める情報
・呼吸状態:呼吸数、呼気時間、努力呼吸、口すぼめ呼吸、補助呼吸筋の使用、会話時の息切れ
・酸素化と換気:SpO2の推移、酸素投与の方法と流量、血液ガス分析の実施状況、意識状態
・咳と痰:咳嗽力、痰の量、色、粘稠度、喀出状況、血痰の有無
・呼吸音と胸郭:喘鳴、呼吸音の減弱、左右差、樽状胸郭、胸郭運動
・活動耐容能:歩行、更衣、入浴、食事、排泄での息切れ、休憩回数、活動後の回復状況
・栄養と全身状態:体重、BMI、食事摂取量、筋力、疲労感、口腔内の状態
・急性増悪の兆候:呼吸困難や痰の急な変化、発熱、頻脈、チアノーゼ、意識状態の変化
・治療の実施状況:禁煙状況、吸入手技、薬剤の使用状況、在宅酸素療法の有無、呼吸リハビリテーションの実施状況
治療は、禁煙を基盤に薬物療法と非薬物療法を組み合わせる
禁煙はCOPDの進行を抑えるための基本的な介入です。喫煙状況だけでなく、禁煙の意思、過去の禁煙経験、家族や生活環境、禁煙支援の利用状況を確認します。
安定期の薬物療法では、吸入気管支拡張薬が治療の中心です。長時間作用型抗コリン薬(LAMA)や長時間作用型β2刺激薬(LABA)が用いられ、症状や急性増悪の状況に応じて治療が調整されます。
吸入ステロイド薬(ICS)は、すべてのCOPD患者さんに一律で用いる薬剤ではありません。急性増悪の既往、血中好酸球数、喘息の合併などを踏まえて、医師が適応を判断します。
呼吸リハビリテーションでは、運動療法、呼吸法、栄養支援、自己管理支援を組み合わせ、呼吸困難の軽減と活動耐容能の維持を目指します。
慢性呼吸不全で重度の低酸素血症がある場合は、長期酸素療法や在宅酸素療法が導入されることがあります。酸素は燃えませんが燃焼を助けるため、火気管理と禁煙を徹底します。
観察所見を病態生理と結び付けてアセスメントする
COPDのアセスメントでは、「SpO2が低い」「痰が多い」と所見を並べるだけでは不十分です。気流閉塞、肺過膨張、排痰不良、呼吸筋疲労、低栄養との関連を考えます。
たとえば「気道狭窄と肺過膨張により呼気時間の延長と労作時呼吸困難がみられる。更衣と歩行で息切れが強く、補助呼吸筋の使用もみられるため、活動前後の呼吸数、呼吸困難感、SpO2、休憩後の回復状況を確認する」と記載すると病態と生活への影響がつながります。
また「粘稠な痰が増加し自力で喀出しにくい。分泌物貯留による換気低下や急性増悪の可能性を考え、痰の性状、咳嗽力、呼吸音、発熱、SpO2の推移を確認する」と記載すると観察の目的が明確になります。
ただし、呼吸困難やSpO2低下はCOPD以外でも生じます。肺炎、心不全、肺塞栓症、気胸などの可能性も踏まえ、症状の経過、既往歴、検査結果、治療内容を合わせて総合的に判断します。
まとめ
COPDでは、気道の慢性炎症と肺胞破壊によって気流閉塞が生じ、息を十分に吐き出しにくくなります。
肺過膨張と呼吸筋への負担増加は息切れにつながり、慢性炎症、活動量低下、食事摂取量低下は低栄養や体重減少に関与します。
看護実習では、SpO2だけでなく、呼吸パターン、咳・痰、呼吸音、栄養状態、ADL、意識状態、急性増悪の兆候を病態生理と結び付けて観察することが重要です。
参考サイト
COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022〔第6版〕 日本呼吸器学会
COPD(慢性閉塞性肺疾患) スマート・ライフ・プロジェクト 健康日本21アクション支援システム
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