慢性腎不全でなぜ浮腫や貧血が起こる?病態生理と観察項目を看護学生向けに整理

看護実習

慢性腎臓病の観察は、腎機能低下が全身へ及ぼす影響から考える

慢性腎不全の観察項目を整理するには、腎臓のろ過、体液調節、電解質調節、造血、骨・ミネラル代謝、酸塩基平衡の機能が低下すると身体に何が起こるかをつなげて考えることが重要です。

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の構造または機能の異常が3か月以上持続する状態です。CKDは単一の疾患名ではなく、糖尿病関連腎臓病、腎硬化症、慢性糸球体腎炎、多発性嚢胞腎などを背景に生じる包括的な概念です。

CKDが進行して腎機能が高度に低下すると老廃物や水分の排泄、電解質・酸塩基平衡の調節、エリスロポエチン産生、活性型ビタミンD産生などが十分に行えなくなります。

看護実習では、浮腫や尿量だけで判断せず、体重、血圧、呼吸状態、食事・水分摂取、検査値、活動耐容能、意識状態、治療内容を経時的に評価します。

腎臓は、排泄だけでなく体内環境を維持する臓器

腎臓は血液をろ過して老廃物を尿として排泄し、水分量とナトリウム、カリウムなどの電解質濃度を調節します。

さらに、レニンを介した血圧調節、赤血球産生を促すエリスロポエチンの産生、ビタミンDの活性化、酸塩基平衡の維持にも関わります。

腎機能が低下するとこれらの機能が同時に障害されるため、体液貯留、尿毒症症状、高カリウム血症、腎性貧血、CKD-MBD、代謝性アシドーシスなどが生じることがあります。

症状の有無だけでは腎機能低下の程度を判断できません。eGFR、尿蛋白・尿アルブミン、血清クレアチニン、電解質、血算などの検査結果と症状を合わせて評価します。

体液貯留では、浮腫だけでなく呼吸状態と循環を確認する

腎機能が低下するとナトリウムと水分を十分に排泄しにくくなり、細胞外液量が増加します。

体液貯留により下腿、足背などに浮腫がみられます。体静脈うっ血や低アルブミン血症なども浮腫に関与するため、浮腫だけで原因を決めつけません。

体液量の増加は血圧上昇、肺うっ血、心不全の増悪につながることがあります。体重、血圧、尿量、入出量、呼吸数、SpO2、呼吸困難、呼吸音、起坐呼吸の有無を合わせて確認します。

短期間の体重増加、浮腫の増悪、呼吸困難、SpO2低下、湿性ラ音などがみられる場合は、体液貯留による呼吸循環への影響を疑い、速やかに報告します。

老廃物の蓄積では、尿毒症症状と生活への影響を捉える

糸球体ろ過量が低下すると尿素窒素などの老廃物や尿毒素が体内に蓄積します。

尿毒症では、倦怠感、食欲低下、悪心、嘔吐、そう痒感、集中力低下、意識状態の変化などがみられることがあります。

食事摂取量、悪心・嘔吐、便通、活動量、睡眠、皮膚の掻痒感、会話の反応、見当識を確認します。症状は尿毒症以外にも薬剤、感染、貧血、電解質異常などで生じるため、単一の原因に限定しません。

進行した腎不全では、呼吸困難、意識障害、心膜炎など重篤な尿毒症症状が生じることがあります。急な全身状態の変化は、検査値と治療状況を含めて評価します。

高カリウム血症では、不整脈の危険性を念頭に置く

腎臓からのカリウム排泄が低下すると高カリウム血症が生じることがあります。

高カリウム血症は、筋力低下、脱力感、しびれなどを伴うことがあり、重症化すると心伝導障害や致死的不整脈につながるおそれがあります。

血清カリウム値、脈拍数とリズム、動悸、胸部不快感、筋力低下、心電図モニター装着時の変化を確認します。

ただし、高カリウム血症は自覚症状が乏しいこともあります。検体溶血による偽性高カリウム血症の可能性もあるため、検査結果と臨床所見を合わせて判断し、異常値は速やかに報告します。

腎性貧血では、エリスロポエチン不足と鉄利用の問題を評価する

腎臓のエリスロポエチン産生が低下すると骨髄での赤血球産生が低下し、腎性貧血が生じます。

CKDでは鉄欠乏や慢性炎症による鉄利用障害も重なるため、貧血の程度をエリスロポエチン不足だけで説明しません。

顔色、口唇・結膜の蒼白、疲労感、動悸、労作時の息切れ、めまい、活動量、転倒リスクを確認します。

ヘモグロビン値、赤血球指数、鉄関連検査、赤血球造血刺激因子製剤や鉄剤の使用状況を治療内容と合わせて確認します。

CKD-MBDでは、リン・カルシウム・PTHの変化と骨折リスクをみる

腎機能低下によりリンの排泄が低下し、活性型ビタミンDの産生も低下するとカルシウム・リン・副甲状腺ホルモン(PTH)の調節が乱れます。

このような骨・ミネラル代謝異常はCKD-MBDと呼ばれ、骨代謝異常や血管石灰化に関与します。

骨痛、関節痛、筋力低下、歩行状態、転倒歴、骨折歴、ADLへの影響を確認します。

血清カルシウム、リン、PTH、アルカリホスファターゼなどの検査結果は、病期や治療内容を踏まえて解釈します。骨痛がないことだけでCKD-MBDがないとは判断できません。

酸塩基平衡と尿濃縮機能の変化から、尿量と排尿パターンを捉える

腎機能が低下すると酸の排泄が障害され、代謝性アシドーシスが生じることがあります。進行すると倦怠感、食欲低下、筋肉量低下などに関与します。

また、尿濃縮機能の低下は比較的早期からみられることがあり、夜間頻尿や多尿として現れる場合があります。腎機能がさらに低下すると尿量が減少することがあります。

尿量、排尿回数、夜間頻尿、飲水量、入出量バランス、体重変化を経時的に確認します。尿量だけで腎機能を評価せず、利尿薬、糖尿病、心不全、飲水量、透析の有無も合わせて考えます。

尿の泡立ちは蛋白尿を疑うきっかけになる場合がありますが、泡立ちだけで蛋白尿の有無は判断できません。尿蛋白、尿アルブミン、尿潜血などは尿検査の結果で確認します。

慢性腎臓病で優先して集める情報

・体液バランス:体重、浮腫の部位と程度、血圧、尿量、入出量、呼吸困難、SpO2、呼吸音

・尿毒症症状:倦怠感、食欲低下、悪心・嘔吐、そう痒感、集中力、意識状態

・電解質:血清カリウム、カルシウム、リン、脈拍、心電図モニターの変化、筋力低下

・貧血:ヘモグロビン値、疲労感、動悸、労作時の息切れ、めまい、活動耐容能

・骨・ミネラル代謝:骨痛、歩行状態、転倒・骨折歴、カルシウム、リン、PTHの検査結果

・排尿と検査:夜間頻尿、尿量の推移、尿蛋白・尿アルブミン、尿潜血、eGFR、血清クレアチニン

・生活と自己管理:食事・水分摂取、塩分・たんぱく質・カリウム・リンの管理状況、内服、血圧測定、定期受診、家族の支援状況

・腎代替療法:透析の有無、透析スケジュール、シャントまたは腹膜透析カテーテルの状態、透析前後の体重と症状

治療は、原因疾患の管理と腎機能低下への対応を組み合わせる

CKDの治療では、糖尿病、高血圧、糸球体疾患などの原因疾患を管理し、腎機能低下と心血管疾患のリスクを抑えることを目指します。

血圧管理、血糖管理、食事療法、禁煙、薬剤調整、貧血治療、CKD-MBDへの治療などは、病期、原因疾患、検査値、併存症に応じて行われます。

食塩、たんぱく質、カリウム、リン、水分の制限内容は患者さんごとに異なります。看護師が一律の制限を指示するのではなく、医師・管理栄養士の指示内容と患者さんの実際の食生活をつなげて支援します。

腎機能が末期まで低下した場合は、血液透析、腹膜透析、腎移植などの腎代替療法が検討されます。治療の選択では、身体状況だけでなく、生活、家族、仕事、本人の価値観も重要です。

観察所見を病態生理と結び付けてアセスメントする

慢性腎不全のアセスメントでは、「浮腫がある」「尿量が少ない」と所見を並べるだけでは不十分です。腎機能低下に伴う体液貯留、尿毒素蓄積、貧血、電解質異常との関連を考えます。

たとえば「腎機能低下により水分・ナトリウム排泄が低下し、前日からの体重増加と両下腿の圧痕性浮腫がみられる。呼吸困難はないが、体液貯留の進行による肺うっ血を予防するため、血圧、尿量、入出量、呼吸数、SpO2、呼吸音を継続して確認する」と記載すると所見と観察の目的がつながります。

また「eGFR低下に伴い血清カリウム値が上昇している。自覚症状はないが、高カリウム血症による不整脈のリスクを考え、脈拍とリズム、心電図変化、筋力低下の有無を確認し、検査結果の変動を報告する」と記載すると緊急性を含めた判断につながります。

ただし、呼吸困難、倦怠感、浮腫、尿量減少はCKD以外の病態でも生じます。心不全、感染、肝疾患、低栄養、薬剤の影響なども踏まえ、検査結果と臨床所見を統合して判断します。

まとめ

慢性腎臓病では、腎機能低下により老廃物、水分、電解質、造血、骨・ミネラル代謝、酸塩基平衡に関する障害が生じます。

観察では、浮腫や尿量だけでなく、体重、血圧、呼吸状態、意識状態、栄養状態、活動耐容能、検査値、自己管理状況を経時的に確認します。

腎機能低下から全身への影響をつなげて考えることで、病態に根拠を持ったアセスメントと看護計画につなげやすくなります。

参考サイト

CKD診療ガイド2024 一般社団法人日本腎臓学会

CKD/慢性腎臓病 健康日本21アクション支援システム

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