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倦怠感を評価する領域
ゴードンの機能的健康パターン:活動-運動パターン、睡眠-休息パターン、認知-知覚パターンなど
ヘンダーソンの14の基本的欲求:移動する、好ましい肢位を保持する、眠る、休息するなど
倦怠感とは
倦怠感とは、活動の有無にかかわらず持続する身体的および精神的な消耗感であり、休息によっても軽快しないまたは回復が不十分な自覚症状をいう。
倦怠感のしくみについては、以下を参照してください。
全身倦怠感に関するQ&A 看護roo!
倦怠感に必須の情報収集項目
疾患の有無、既往歴、家族歴
服薬状況
倦怠感の状況(出現するタイミング、持続時間、倦怠感の程度、どんな倦怠感か(患者の訴え)、休息後の回復の有無)
増悪、軽減する因子の有無
倦怠感以外の症状の有無
バイタルサイン
倦怠感の特定のための検査および原因疾患に対する検査データ(血液検査、尿検査、便検査、レントゲン、心電図、CT、MRI、心理検査、精神状態の評価など)
ADL、IADL
食事摂取量
水分摂取量
活動状況
睡眠状況
ストレスや不安の有無、精神状況
倦怠感に対する治療の有無(原因疾患に対する治療、安静療法、活動量の調整、精神的なサポートなど)
倦怠感に対する治療の効果
倦怠感に対する患者や家族の反応
倦怠感のアセスメント定型文
アセスメントの基本的な流れと書き方
アセスメントの基本的な流れと書き方は次のようになります。
1.患者の状態の判断
【患者の情報】から患者の状態は適切ではない・異常である(正常ではない)。
2.根拠の記載
判断した患者の状態は【判断した根拠や理由】によって生じている。
3.実在型問題の記載
現在、患者の【適切ではない・異常である(正常ではない)状態】により【実在型】の看護問題が起きており、【実在型】の看護問題を挙げる。
現在、【適切ではない・異常である(正常ではない)状態】の随伴症状により【実在型】の看護問題が起きており、【実在型】の看護問題を挙げる。
4.今後の見通し、リスク型問題の記載
今後、患者の【適切ではない・異常である(正常ではない)状態】により
【リスク型】の看護問題が起きる可能性があり、【リスク型】の看護問題を挙げる。
今後、患者の【適切ではない・異常である(正常ではない)状態】の随伴症状により【リスク型】の看護問題が起きる可能性があり、【リスク型】の看護問題を挙げる。
作成の方法
・1~4をつなぎ合わせてアセスメントを作成してください。
・【 】の中には具体的な内容を記入するか、項目の中から選択してください。
・( )は表現の言い換えになります。両方または使いやすい方を選択してください。
1.患者の状態の判断
■患者の状態
Aさんは【いつから】、【倦怠感が始まった時の状況を記入】となり、【倦怠感が生じてから現在までの経過を記入】。現在は【倦怠感の詳しい状況を記入】である。
検査データは【異常な検査データ、画像などの結果を記入】である。
■介入の有無
倦怠感に対しては【治療、ケアなどの対策】が行われている。
倦怠感に対しては【治療、ケアなどの対策】が行われているが効果は十分ではない。
倦怠感に対しては【治療、ケアなどの対策】が行われており【効果を具体的に記入】。
■患者・家族の思い、認識
Aさん(Aさんの家族)は倦怠感について【患者の反応(家族の反応)】と【話している、認識している】。
■適切・不適切の判断
(ゴードンの場合)
以上の情報から、倦怠感による弊害が認められる現在の状況は適切な状態とは言えない。
(ヘンダーソンの場合)
以上の情報から倦怠感による弊害が認められる現在の状況は異常な状態である。(正常な状態とは言えない。)
2.根拠の記載
2-1.はじめに倦怠感の機序を記入します。
倦怠感は、生体の恒常性(ホメオスタシス)が何らかの原因で障害された際に、身体活動を抑制してエネルギーの温存と回復を促すための生体防御反応と考えられている。A氏の場合、倦怠感の原因として以下の内容が考えられる。
2-2.上記に続けて患者に当てはまる要因や原因を記入してください。
■中枢神経系疾患による倦怠感
【脳出血、脳梗塞、脳腫瘍、頭部外傷、脳炎、髄膜炎、パーキンソン病、多発性硬化症など】により中枢神経系が【損傷、変性】すると、運動や覚醒を司る脳内の神経ネットワークが破綻する。これにより残存する部位が機能を補うために過活動となり、脳のエネルギー消費量が増大する。また、ドーパミン、セロトニンなどの神経伝達物質のバランス異常による神経系機能の低下、慢性的な神経炎症により産生・放出された炎症性サイトカインによる中枢神経への刺激、【麻痺、協調運動障害】によるエネルギー消費量の増大、筋力低下により身体活動時に筋肉をうまく動かせずにより多くのエネルギーを要するなどが複合的に関与する。この倦怠感はこれらの機序により生じている。
■筋萎縮性側索硬化症(ALS)による倦怠感
筋萎縮性側索硬化症(ALS)により【大脳皮質運動野、上位運動ニューロン、下位運動ニューロン】の脊髄前角細胞や脳幹の運動神経細胞が脱落・変性し、全身の筋力低下と筋萎縮が進行する。特に肺胞低換気による慢性的なガス交換の異常(低酸素血症や高CO₂血症)が生じて全身の細胞におけるエネルギー産生が低下する。また、残存する筋線維への過負荷によるエネルギー消費量の増大、嚥下障害に伴う低栄養によるエネルギー不足、神経変性部位の慢性炎症により産生・放出された炎症性サイトカインによる中枢神経への刺激、進行する機能障害への心理的消耗などが複合的に関与する。この倦怠感はこれらの機序により生じている。
■重症筋無力症による倦怠感
重症筋無力症では、自己免疫の異常により抗アセチルコリン受容体抗体が神経筋接合部のアセチルコリン受容体を障害し減少させる。これにより神経から筋肉への指令(信号)の伝達が低下し、筋収縮が持続できなくなる。その結果、反復運動を行うと筋力が急激に低下するため、身体活動時に筋肉をうまく動かせずより多くのエネルギーを要する。また、呼吸筋の易疲労性による肺胞低換気により、ガス交換の異常(低酸素血症や高CO₂血症)が生じて全身の細胞におけるエネルギー産生が低下する。さらに、嚥下筋の易疲労性による低栄養によりエネルギー不足となる。この倦怠感はこれらの機序により生じている。
■ギランバレー症候群による倦怠感
ギラン・バレー症候群は、先行感染をきっかけに自己免疫反応が生じ、末梢神経の髄鞘や軸索が急速に障害される。これにより脳からの指令(信号)が遮断されて進行性の弛緩性麻痺が生じる。この神経伝達障害と弛緩性麻痺により身体活動時に筋肉をうまく動かせず、より多くのエネルギーを要する。この倦怠感はこれらの機序により生じている。
※ギラン・バレー症候群の重症例では、呼吸筋麻痺によるガス交換の異常(低酸素血症や高CO₂血症)、自律神経障害による循環動態の不安定、激しい神経障害性疼痛、炎症により産生・放出された炎症性サイトカインによる中枢神経への刺激などが複合的に関与し、全身の倦怠感を増悪させます。
その他の根拠一覧
■ガス交換障害による倦怠感
■換気障害による倦怠感
■循環障害による倦怠感
■貧血による倦怠感
■消化・吸収障害による倦怠感
■肝疾患による倦怠感
■炎症性腸疾患(IBD)による倦怠感など
■腎疾患による倦怠感
■甲状腺機能亢進症(バセドウ病)による倦怠感
■甲状腺機能低下症(橋本病)による倦怠感
■クッシング症候群による倦怠感
■副腎皮質機能低下症による倦怠感
■1型糖尿病による倦怠感
■2型糖尿病による倦怠感
■全身性エリテマトーデス(SLE)による倦怠感
■関節リウマチによる倦怠感
■ベーチェット病による倦怠感
■多発性筋炎、皮膚筋炎による倦怠感
■シェーグレン症候群による倦怠感
■全身性強皮症による倦怠感
■感染症による倦怠感
■悪性腫瘍による倦怠感
■白血病による倦怠感
■抗がん剤による倦怠感
■β遮断薬による倦怠感
■ステロイド薬による倦怠感
■SSRI、SNRIによる倦怠感
■抗不安薬による倦怠感
■栄養障害による倦怠感
■電解質異常による倦怠感
■慢性疼痛による倦怠感
■睡眠障害による倦怠感
■更年期障害による倦怠感
■ストレスによる倦怠感
■精神疾患による倦怠感

