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便秘を評価する領域
ゴードンの機能的健康パターン:排泄パターン
ヘンダーソンの14の基本的欲求:身体の老廃物を排泄する
便秘とは
便秘とは、排泄されるべき便が十分に排泄されないことにより、排便回数の減少、硬便、過度な怒責、残便感、肛門の閉塞感などの排便困難感を認める状態を言う。
便秘の分類
便秘は、「原因」、「部位」、「期間」の3つに分類することができる。
原因による分類
便秘は、その原因から一次性便秘と二次性便秘に大別される。
一次性便秘(原発性便秘、機能性便秘):腸管そのものに明らかな原因疾患がなく、大腸の蠕動運動や排便機能の問題により生じる便秘のこと。機能性便秘はさらに以下の4つに分かれる。
1.弛緩性便秘:腸管の緊張や蠕動運動の低下により便が大腸に長く滞留したことで便の水分が過度に吸収されて生じる便秘のこと。
2.痙攣性便秘:自律神経の不均衡や腸管運動の不調和により腸管が不規則に収縮し便の移送が妨げられることで生じる便秘のこと。
3.直腸性便秘:便意を我慢する習慣や神経障害などにより直腸の感受性が低下し、直腸内に便が到達または貯留しても便意が起きないことで生じる便秘のこと。
4.排出性便秘: 骨盤底筋群と肛門括約筋の協調不全により排便が困難になり生じる便秘のこと。
二次性(続発性)便秘:何らかの原因により二次的に生じる便秘のこと。
1.器質性便秘:腸管の形態的変化(狭窄や閉塞)が原因で生じる便秘のこと。
2.医原性便秘:薬剤や医療行為により生じる便秘のこと。
3.症候性便秘:全身疾患(甲状腺機能低下症、糖尿病神経障害、パーキンソン病など)の症状として生じる便秘のこと。
4.産科的便秘:妊娠や分娩により生じる便秘のこと。
部位による分類
便の通過障害がどの部位で起きているかによる分類。「原因による分類」の一次性便秘(原発性便秘、機能性便秘)は、以下のどちらかに大別される。
1.大腸性便秘(大腸通過遅延型):大腸の輸送機能の低下により便を直腸まで運べないことにより生じる便秘のこと。
2.直腸性便秘(便排出障害型):直腸の知覚低下や排出機能の障害によりうまく排出できないことにより生じる便秘。
時期による分類
便秘が持続している期間による分類。
1.一過性便秘(単純性便秘):旅行や入院などの生活・食事環境の変化、水分摂取量が少ない、急性のストレスなどによる一時的な便秘のこと。可逆的で原因が解消されれば改善する。
2.習慣性便秘(慢性便秘、常習性便秘):長期にわたり持続的にみられる便秘のこと。慢性便秘の期間の目安として国際的には「6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月間はその状態が続いている」とされるが、日本のガイドラインでは「日常診療においては厳密な期間で区切らず、患者を診療する医師の判断に委ねる」とされている。
排便と便秘のしくみ
※詳しくは以下を参照してください。
便の成分・排便のメカニズム 看護roo!
便秘に関するQ&A 看護roo!
便秘 看護roo!
便秘に必須の情報収集項目
便秘の原因
排便状況、排便状況の変化
排便時の自覚症状(過度の努責、排便困難感、排便時の痛み、残便感)
排便日誌(排便時間、排便回数、排便量、便性状)
便秘の随伴症状の有無と程度(腹部膨満感、腹痛、食欲不振、悪心・嘔吐、不安、イライラ感など)
便秘に関する検査データ(腹部単純レントゲン、便潜血検査、血液検査(炎症反応、疾患の影響)など)
バイタルサイン
ADL、運動機能障害の有無
意識レベル
認知機能、認知機能障害の有無
食事量、食事内容
飲水量、飲水内容
服薬状況
便秘に対する治療の有無(食事療法、運動療法、排便管理、薬物療法など)
便秘に対する治療の効果
便秘に対する患者や家族の反応
便秘のアセスメント定型文
アセスメントの基本的な流れと書き方
アセスメントの基本的な流れと書き方は次のようになります。
1.患者の状態の判断
【患者の情報】から患者の状態は適切ではない・異常である(正常ではない)。
2.根拠の記載
判断した患者の状態は【判断した根拠や理由】によって生じている。
3.実在型問題の記載
現在、患者の【適切ではない・異常である(正常ではない)状態】により【実在型】の看護問題が起きており、【実在型】の看護問題を挙げる。
現在、【適切ではない・異常である(正常ではない)状態】の随伴症状により【実在型】の看護問題が起きており、【実在型】の看護問題を挙げる。
4.今後の見通し、リスク型問題の記載
今後、患者の【適切ではない・異常である(正常ではない)状態】により
【リスク型】の看護問題が起きる可能性があり、【リスク型】の看護問題を挙げる。
今後、患者の【適切ではない・異常である(正常ではない)状態】の随伴症状により【リスク型】の看護問題が起きる可能性があり、【リスク型】の看護問題を挙げる。
作成の方法
・1~4をつなぎ合わせてアセスメントを作成してください。
・【 】の中には具体的な内容を記入するか、項目の中から選択してください。
・( )は表現の言い換えになります。両方または使いやすい方を選択してください。
1.患者の状態の判断
■患者の状態
Aさんは【いつから】、【便秘が始まった時の状況を記入】となり、【便秘が生じてから現在までの経過を記入】。現在は【便秘の詳しい状況を記入】である。
検査データは【異常な検査データ、画像などの結果を記入】である。
■介入の有無
便秘に対しては【治療、ケアなどの対策】が行われている。
便秘に対しては【治療、ケアなどの対策】が行われているが効果は十分ではない。
便秘に対しては【治療、ケアなどの対策】が行われており【効果を具体的に記入】。
■患者・家族の思い、認識
Aさん(Aさんの家族)は便秘について【患者の反応(家族の反応)】と【話している、認識している】。
■適切・不適切の判断
(ゴードンの場合)
以上の情報から、便秘とそれに伴う弊害が認められる現在の状況は適切な状態とは言えない。
(ヘンダーソンの場合)
以上の情報から便秘とそれに伴う弊害が認められる現在の状況は異常な状態である。(正常な状態とは言えない。)
2.根拠の記載
■大脳の障害による便秘
【脳出血、脳梗塞、脳炎、脳腫瘍など】により、大脳の【皮質、皮質下】が障害されると排便調節機能が乱れて排便の抑制や反射をコントロールできなくなる。また、直腸からの便意を認識できなくなる。さらに疾患に伴う活動量や筋力の低下、麻痺により排便に必要な動作が十分に行えない、高次機能障害により排便行為や動作がわからないなどの後遺症も便秘の一因となる。この便秘はこれらの機序により生じている。
■パーキンソン病、多系統萎縮症による便秘
【パーキンソン病、多系統萎縮症】により大脳基底核が障害されると運動機能障害により腸管平滑筋の蠕動運動が著しく低下する。また、腹筋と肛門括約筋の協調不全により便排出障害が生じる。さらに迷走神経・腸管神経系が障害されると腸管の緊張が低下し、蠕動運動がさらに低下する。加えて嚥下障害や食欲不振による食事・水分摂取量の低下なども便秘の一因となる。この便秘はこれらの機序により生じている。
■認知症による便秘
認知症により大脳の【皮質、皮質下】が障害されると排便調節機能が乱れて排便の抑制や反射をコントロールできなくなる。また、直腸からの便意を認識できなくなる。さらに記憶障害により食事・水分量が低下することや排便習慣を保持できないこと、見当識障害によりトイレの場所がわからず便意を我慢する習慣が身に付くこと、遂行機能障害により排便動作を遂行できないことなども便秘の一因となる。この便秘はこれらの機序により生じている。
その他の根拠一覧
■脊髄の障害による便秘
■筋ジストロフィーによる便秘
■心不全による便秘
■慢性閉塞性肺疾患(COPD)による便秘
■巨大結腸による便秘
■大腸憩室症による便秘
■炎症性腸疾患による便秘
■大腸がんによる便秘
■直腸がんによる便秘
■肛門疾患による便秘
■慢性腎不全による便秘
■腹腔内腫瘍による便秘
■糖尿病神経障害による便秘
■甲状腺機能低下症による便秘
■副甲状腺機能亢進症による便秘
■高カルシウム血症による便秘
■全身性強皮症による便秘
■下肢の骨折による便秘
■オピオイド鎮痛薬による便秘
■抗コリン薬による便秘
■定型抗精神病薬、三環系抗うつ薬による便秘
■抗うつ薬(SSRI、SNRI)による便秘
■降圧剤(カルシウム拮抗薬)による便秘
■制酸薬による便秘
■鉄剤による便秘
■刺激性下剤の乱用による便秘
■手術による便秘
■食事摂取量の不足、食事制限による便秘
■食事内容の偏りによる便秘
■水分量の不足、水分制限による便秘
■活動不足、運動不足、安静度の制限による便秘
■便意を我慢する習慣による便秘
■筋力低下による便秘
■加齢による便秘
■黄体ホルモン(プロゲステロン)の増加による便秘
■妊娠による便秘
■産後(軟産道や会陰トラブル)による便秘
■産後(腹筋や骨盤底筋群の機能低下)による便秘
■一時的なストレスによる便秘
■過敏性腸症候群(IBS)による便秘
■精神疾患による便秘

