本日の質問
実習でなかなかケアを受け入れてもらえない患者さんを受け持っています。
私なりにケアの重要性を説明しようとするのですが、説得のようになってしまい患者さんの心を閉ざしてしまっているように感じます。患者さんの気持ちを尊重しながら、こちらの提案を受け入れてもらえるようなコミュニケーションのコツを教えてもらいたいです。
本日の回答
それはとても難しい場面ですね。一方的に説得しようとすると相手は守りに入ってしまい話を聞いてくれなくなります。大切なのは、相手の心を動かし「この人の言うことなら少しやってみようかな」と思ってもらう関係性を築くことです。
今日は相手の心に寄り添いながら上手にこちらの想いを伝えるための一歩進んだコミュニケーション技術を一緒に学んでいきましょう。
1.まずは相手の「心の声」を聴く
人は誰でも自分のことを認めてほしい、理解してほしいというニーズを持っています。相手の心を動かす第一歩は、会話の中からその人が「いま何を求めているか」を見つけ出し、それに応えてあげることです。これは相手のタイプによって対応が異なります。
その患者さんが主導権を握りたい人であれば、まずは相手にたくさん話してもらい意見を尊重する姿勢を見せましょう。
その患者さんが安心したい人であれば、決して批判せず「そうですよね。」と共感の言葉を伝えて安全な雰囲気を作りましょう。
2.自分の「感情」を正直に伝える
自分の意見を伝える時は正論だけをぶつけるのではなく、あなたの「感情」をフィルターにして伝えてみましょう。これを「感情レンズ」と呼びます。
例えば「私も自信がなくて不安なんです」、「どうすれば一番良いのか、私も一緒に悩んでいます」のように自分の弱さや迷いを正直に伝えると相手は心を開きやすくなります。また、「なぜ私がこのケアをあなたにしてあげたいと思っているか」というあなたの意見の背景にある「想い」を説明することも相手の理解を深めるのにとても効果的です。
3.デリケートな話題は「クッション言葉」で
ケアの提案など、相手が抵抗を感じるかもしれない話題を切り出すときは「クッション言葉」を使いましょう。
「もし、私の勘違いだったら申し訳ないのですが」、「これはあくまで私個人の考えなのですが」と前置きをすることで、意見の対立を避け相手が話を聞く態勢を整えやすくなります。
4. あえて「会話のペース」を落としてみる
私たちは忙しいとつい効率を求めて早口になったり、相手の話を遮ってしまったりしがちです。しかし、それが相手に「この人は私のことを見てくれていない」という無関心な印象を与えてしまうことがあります。相手の表情や呼吸のペースをよく観察し、意識的に会話の速度を落としてゆったりとした「間」を作ることで、「あなたのことを大切に思っています」というメッセージが伝わり信頼関係が深まります。
5.非言語的コミュニケーションを意識する
言葉だけでなく、表情や態度も非常に重要です。
「口角を少しだけ上げて、優しい表情を意識する」、「少しだけ前かがみになり、相手の目を見て、うんうんと頷きながら聴く」などの非言語的なサインは「私はあなたの味方です」という安心感を伝え、患者さんが心を開いてくれる大きなきっかけになります。
これらのスキルは相手をコントロールするためのテクニックではありません。あくまで患者さんとの関係をより良くし、最善のケアを提供するためのヒントです。全部を一度にやろうとせず、「今日は少し会話のペースを落としてみようかな」というように一つずつ意識してみてくださいね!
本日のまとめ


