本日の質問
術後の看護計画で術中の情報から患者さん個別の注意点を挙げなければならないのですが、考え方が分からず困っています。
患者さんの手術記録を見ると、術式や麻酔時間、出血量、バイタルサインなどに特に目立った異常はありませんでした。術中の水分バランスが+2000mlと少し多いかなと感じたくらいです。
そのため「長時間同じ体位だったことによる影響」や「全身麻酔による影響」といった一般的な術後の注意点しか思い浮かばず、個別性がないのではないかと悩んでいます。
データに異常がない場合、どのように分析してその患者さんならではの術後の注意点を見つければ良いのでしょうか?
本日の回答
術後のアセスメント、特に個別性を出すのは難しいと感じますよね。でも、データに異常がないように見える時こそ看護師の「予測する力」が試される場面なんです。一緒に考え方のヒントを探していきましょう。
術後の「尿量」のアセスメントについて
水分バランスがプラスになっている点に気づけたのはとても良い視点です!
術後は、手術という大きなストレスから体を守るために水分を溜め込む「傷害期」という時期になります。なので、水分がプラスになるのは正常な反応です。
ただし、その後に体は溜め込んだ水分を外に出そうとする「リフィリング期」に移行します。この時に輸液の量を調整しないと、今度は心臓に負担がかかって心不全を起こすリスクが出てきます。
ですので「術後の尿量が計算上必要な量を満たしているか」をアセスメントしつつ、「今後はリフィリング期に移行し、循環動態が変化する可能性がある」と予測を立てておくと単なる観察から一歩進んだアセスメントになります。
「個別性」を見つけるための3つのステップ
では、本題の「個別性」の見つけ方です。これは、探偵のように「術前の情報」というヒントから、「術後に起こりうるリスク」という犯人を予測していくイメージで考えてみましょう。
ステップ1:まずは「一般的な合併症」をリストアップする
はじめに、今回の手術で起こりやすい一般的な術後合併症を教科書で確認します。これはあなたが最初に考えた「同一体位の影響」や「全身麻酔の影響」ですね。これは基本として押さえておくべき大切な土台になります。
ステップ2:「術前の情報」から、患者さんだけの”危険因子”を探す
次に、その一般的な合併症のリスクが「この患者さんの場合は他の人より高いのか、低いのか」を考えます。そのヒントは術前の情報に隠されています。
既往歴や過去の手術歴、年齢:例えば、もともと心臓や肺に病気がある方、高齢の方は、麻酔からの回復が遅れたり、心不全や肺炎を起こすリスクが他の人より高くなります。
術前の検査データ: 例えば、術前から貧血(ヘモグロビン値が低い)があった場合、体の隅々まで酸素を運ぶ力が弱まっていますね。そうすると、傷を治すために必要な酸素が不足し創傷治癒が遅れるリスクがあります。さらに、治りが遅れるとそこから感染を起こすリスクにも繋がります。
生活習慣(喫煙歴など): 例えば、長年タバコを吸っている方の場合、肺の機能が落ちていたり気道が常に炎症を起こしている可能性があります。そうすると、全身麻酔後に痰がうまく出せず、無気肺や肺炎を起こすリスクが他の人より高くなります。
ステップ3:「心理・社会的情報」も重要なヒント
術前の患者さんの発言: もし患者さんが術前に「痛いのは嫌だなあ」と強い不安を口にしていたら、術後の痛みに対して他の人より敏感になっている可能性があります。痛みが強いと、体を動かせず、深呼吸もできなくなり、結果として肺炎や血栓症のリスクが高まります。また、強い不安は術後に「せん妄」を引き起こすリスク因子にもなります。
このように、「貧血」「喫煙」「不安」といった、一見すると手術と直接関係なさそうな情報が術後の個別的なリスクに繋がっていきます。「この情報が、術後にどんな影響を与えるだろう?」と一つひとつ丁寧に考えていくことが個別性のあるアセスメントへの近道になりますよ!
本日のまとめ
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