アルコール離脱せん妄では、興奮の有無だけでなく、意識や行動、身体症状、安全面を時間の流れで見ることが大切です。
最後に、実習でそのまま使える「観察・報告の手順」を用意しました。
【本日の質問】
実習でアルコール離脱せん妄が疑われる患者さんを受け持つことになりました。
興奮しているかどうかだけを見れば良いというわけではないと思うのですが、学生は何を中心に観察すればいいですか?
見つけた変化をどのように考えて報告すれば良いのかも知りたいです。
【本日の回答】
アルコール離脱せん妄の患者さんを観察する時は、意識や行動の変化、身体症状、安全面の3つに分けて見ると整理しやすいです。
離脱症状は時間とともに強くなることがあるので、その時の様子だけで終わらせず、「少し前よりどうか」「前日と比べて変わっているか」という流れで追うことが大切です。
まずは意識や行動です。
意識レベルや注意が保てているか、見当識が保てているか、会話がつながるか、落ち着かなさやそわそわした動きがないか、いらだちが強くなっていないか、夜に眠れているか、幻覚や錯覚を思わせる言動がないかをみます。
さっきまで普通に話せていたのに急に話がかみ合わなくなったり、周囲を気にしてきょろきょろしたりする変化は大事なサインです。
手の震えや発汗が目立ってきたかも一緒に見ると変化をつかみやすくなります。
ただし、幻覚があることだけで離脱せん妄と決めつけるのではなく、注意が続きにくい、見当識が崩れる、会話が成り立ちにくいなど、意識や認知の変化とセットで見ることが大切です。
次に身体症状です。
バイタルサインでは、脈拍の上昇、血圧の上昇、発熱、呼吸の変化がないかを確認します。
離脱のときは自律神経症状が出やすいので、基準値から外れているかだけでなく、普段より高い状態が続いていないかという見方が大切です。
あわせて、水分摂取量、食事量、嘔気、発汗、脱水の有無もみておくと全身状態の悪化に気づきやすくなります。
栄養状態が不安定な患者さんもいるので、ふらつき、だるさ、表情の変化にも目を向けてください。また、けいれんの有無にも注意が必要です。
なお、すでに薬物治療が始まっている場合は、眠気が強すぎないか、呼吸が浅くなっていないか、SpO₂が下がっていないかもあわせて観察し、早めに共有します。
安全面もかなり重要です。
せん妄が強くなると点滴やモニターを外そうとする、急に立ち上がる、部屋を出ようとするなどの行動につながることがあります
危険な行動が起きてから慌てるのではなく、「今の落ち着かなさだと転倒や自己抜去につながりそうか」という危険予測の視点で、環境調整や見守りの必要性を早めに共有することが大切です。
ベッド周囲の物の配置、離床時のふらつき、トイレ移動の様子も観察に入ります。
報告する時は、「せん妄っぽいです」とまとめるよりも、「30分前より会話がかみ合いにくいです」「発汗と手の震えが強く、脈拍も上がっています」「点滴を何度も触ろうとしています」のように、見た事実を具体的に報告する方が症状の変化を踏まえた判断につながります。
意識や行動、身体症状、安全面の3つをセットで観察し、いつもと違う変化を早めに拾ってつなげることが、学生さんにできる大切な関わりです。
📌 本日の要点まとめ

【観察・報告の手順】
1)意識や行動の変化を観察する
・見当識
・会話のつながり
・落ち着かなさ
・睡眠状況
・幻覚の有無
・幻覚は単独で判断せず、見当識や会話の変化とあわせて見る
2)身体症状を観察する
・脈拍
・血圧
・体温
・呼吸の変化
・発汗
・振戦
・嘔気、嘔吐
・脱水の有無
・食事摂取状況
・水分摂取状況
・不安や焦燥の強さ
・眠気の強さ
・SpO₂
3)安全面を観察する
・転倒につながる行動の有無
・自己抜去につながる行動の有無
・無断離床につながる行動の有無
4)変化を具体的に報告する
・「さっきより会話がかみ合わない」
・「発汗と振戦が強い」
・観察した事実をそのまま伝える
・30分前と比べた変化
・眠気が強すぎる
・呼吸が浅い
・SpO₂が低下している
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