急性・慢性心不全の違いとは?病態生理から観察項目まで看護学生向けに整理

看護実習

急性心不全と慢性心不全は、悪化の速さと観察の優先度が異なる

急性心不全と慢性心不全の観察項目を整理するには、心拍出量の低下と体液うっ滞がどのように現れるかを分けて考えることが重要です。

心不全は、心臓の構造や機能の異常によって心ポンプ機能の代償が破綻し、呼吸困難、倦怠感、浮腫、運動耐容能の低下などが生じる臨床症候群です。

急性心不全では短時間で進む肺うっ血や低心拍出への対応が優先されます。慢性心不全では日々の体液量、症状、活動耐容能の変化から増悪の兆候を捉えることが重要です。

急性心不全は、肺うっ血と低心拍出が短時間で進行する状態

急性心不全は、新たに発症した心不全または慢性心不全が急激に悪化して、速やかな評価と治療を要する状態です。

急性冠症候群、不整脈、高血圧緊急症、急性の弁機能障害などにより心機能が急に悪化すると心臓は全身へ十分な血液を送り出しにくくなります。

左心系の充満圧が上昇すると左心房から肺静脈へ圧が伝わり、肺うっ血が生じます。肺間質や肺胞に水分が貯留すると呼吸困難、起座呼吸、低酸素血症がみられ、さらに進行すると肺水腫に至ることがあります。

心拍出量の低下が強い場合は、血圧低下、頻脈、四肢冷感、皮膚色の変化、尿量減少、意識状態の変化がみられます。呼吸状態だけでなく、うっ血と末梢循環の両方を緊急度の高い所見として評価します。

急性心不全で優先して確認する呼吸状態

呼吸数、呼吸の深さ、努力呼吸、会話時の息切れ、起座呼吸の有無を確認します。横になると息苦しさが増す場合は、肺うっ血の進行によって臥位で静脈還流が増え、呼吸困難が増悪している可能性があります。

SpO2の推移を確認し、酸素投与中であれば投与方法や流量と合わせて評価します。数値だけで判断せず、呼吸困難感、呼吸仕事量、チアノーゼ、会話の途切れも確認します。

呼吸音では湿性ラ音の有無と聴取範囲の変化を確認します。ただし、肺うっ血があっても湿性ラ音が明瞭でない場合があるため、呼吸音だけで肺うっ血の有無や重症度を判断しません。

急性心不全で合わせて確認する循環・意識・尿量

血圧、脈拍、脈の整不整、末梢冷感、皮膚色を確認し、心拍出量低下や循環不全を疑う所見がないかを評価します。

意識レベルはJCSなどを用いて継続的に確認します。意識の変化は脳血流低下だけでなく、低酸素血症、薬剤、電解質異常なども関与するため、呼吸状態と循環状態を合わせて判断します。

尿量は腎血流の低下や循環不全の程度を反映することがあります。時間尿量、24時間尿量、利尿薬投与後の変化を、血圧や腎機能に関する検査値と合わせて確認します。

慢性心不全は、代償機転が体液貯留と症状の増悪につながる状態

慢性心不全は、高血圧性心疾患、虚血性心疾患、心筋症、弁膜症などを背景として、心機能低下が持続する状態です。

心拍出量が低下すると身体は交感神経系やレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を活性化して、血圧と臓器灌流を維持しようとします。

この代償は短期的には循環維持に役立ちますが、血管収縮やナトリウム・水分貯留を促し、心臓の前負荷や後負荷を増やします。その結果、肺うっ血や全身の静脈うっ血が持続・増悪し、息切れ、浮腫、体重増加、易疲労感につながります。

慢性心不全では、症状が安定している時期にも軽微な体液貯留や生活状況の変化が増悪の前兆となることがあります。急性増悪を早期に捉えるため、単回の値ではなく経時的な変化を確認します。

慢性心不全では体重と浮腫の推移から体液貯留を捉える

体重は、体液貯留の変化を把握するために重要です。できるだけ同じ条件で毎日測定し、食事量や排便状況も踏まえて連日の増減を確認します。

浮腫は、下腿、足背などにみられます。部位、左右差、圧痕の有無、皮膚の緊張、前日からの変化を確認します。

心不全の浮腫は、静脈うっ血に加えて、腎血流低下や神経体液性因子の活性化によるナトリウム・水分貯留が関与して生じます。浮腫だけで心不全の悪化と決めつけず、体重、呼吸状態、尿量、血圧、服薬状況などを合わせて評価します。

慢性心不全では尿量、食事・水分、服薬の継続状況を確認する

尿量は、腎血流、静脈うっ血、体液量、利尿薬の効果などの影響を受けます。24時間尿量、排尿回数、夜間尿、飲水量、点滴量を確認し、入出量バランスを評価します。

食事では摂取量だけでなく、塩分制限や水分制限が必要な理由を理解しているか、実際の食生活で継続できているかを確認します。

利尿薬を含む治療薬の内服状況、飲み忘れ、副作用による継続困難の有無を確認します。自己判断での中断や過量摂取は増悪や脱水につながるため、服薬状況を症状の変化と結びつけて捉えます。

慢性心不全では活動耐容能の低下を生活場面で把握する

歩行、更衣、入浴、排泄などで息切れや疲労感がどの程度出現するかを確認します。安静時には症状がなくても、活動時だけに呼吸困難や動悸が現れることがあります。

活動前後の呼吸数、脈拍、SpO2、自覚症状を確認し、以前と比べて休憩回数や所要時間が増えていないかを評価します。

ADLが低下している場合は、心不全による運動耐容能低下だけでなく、廃用、貧血、呼吸器疾患、疼痛、心理的な不安などの影響も考えます。生活機能の変化を単一の原因に限定せず、複数の情報を統合して判断します。

実習記録では、所見を病態と結びつけて記載する

「下腿浮腫がある」と記載するだけでは、所見の列挙にとどまります。部位、程度、体重や尿量の推移、呼吸状態を合わせて、体液貯留や静脈うっ血との関連を考えます。

例えば「前日からの体重増加と両下腿の圧痕性浮腫、尿量減少がみられるため、体液貯留が進行している可能性がある。呼吸困難、SpO2、呼吸音、入出量の変化を継続して確認する」と記載すると観察所見と病態、次に確認すべき内容がつながります。

一方で、浮腫、息切れ、尿量減少は心不全以外の病態でもみられます。急性心不全と慢性心不全の観察項目は、単独の症状で結論づけず、経過、バイタルサイン、身体所見、検査データ、治療内容を総合して評価します。

まとめ

急性心不全では、肺うっ血による呼吸状態の悪化と低心拍出による循環不全を優先して観察します。

慢性心不全では、体重、浮腫、尿量、食事・水分摂取、服薬状況、活動耐容能の経時的な変化から、体液貯留や増悪の兆候を把握します。

症状を確認した際は、何が起きているかだけでなく、どの病態が関与し、ほかにどの所見を確認する必要があるかまで考えることが、実習でのアセスメントにつながります。

参考サイト

2025年改訂版 心不全診療ガイドライン 日本循環器学会・日本心不全学会合同ガイドライン

心不全手帳 第3版 一般社団法人日本心不全学会

心不全とは、こんな病気です 公益財団法人日本心臓財団

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