ちょっと知りたい!看護実習ミニ辞典:腹部の診察

成人

腹部の診察では、皮膚や腹部の形、腸蠕動音、打診音、圧痛の有無などを確認します。
打診や触診の刺激によって腸蠕動音が変化する可能性があるため、視診、聴診、打診、触診の順に進めます。

診察前に患者さんの状態を整える

腹部の診察は、患者さんの同意を得てから行います。
尿意が強い場合は、排尿後に行います。
必要な範囲だけを露出し、保温とプライバシーに配慮します。

基本は仰臥位です。
膝を軽く曲げてもらうと腹壁の緊張がやわらぎます。
診察を始める前に、痛む場所を確認します。

腹部は視診・聴診・打診・触診の順に見る

1.視診:皮膚、腹部の形、動きを見る
2.聴診:腸蠕動音を聴く
3.打診:腹部の空気や実質臓器による音の違いを見る
4.触診:圧痛、筋性防御、腫瘤などを確認する

腹部の診察中は、患者さんの表情や呼吸の変化も観察します。

視診では皮膚・形・動きを見る

腹部を正面と側面から観察します。

確認する内容は次のとおりです。
・皮膚の色や発疹、手術痕、腹壁静脈の怒張
・腹部の膨隆、左右差、局所的な膨らみの有無
・呼吸に伴う動き、拍動、目で見える腸蠕動の有無

明らかな拍動性の膨らみがある場合は、強く触れずに報告しましょう。

聴診では腸蠕動音を先に聴く

腸蠕動音は、1分間に4~12回程度が目安です。
聴診器を温め、腹壁へ軽く当てます。
まず右下腹部で聴診し、右上腹部、左上腹部、左下腹部の順に聴診します。
まず15秒程度聴き、腸蠕動音が少ない場合は1分間、聞こえない場合はさらに3~4分間聴きます。

確認する内容は次のとおりです。
・腸蠕動音が聞こえるか
・腸蠕動音の回数
・部位による違いがないか
・金属性など音の性状に変化がないか

腸蠕動音が少ない、頻回、金属性、聴取できない場合は、腹痛、腹部膨満、嘔吐、排便・排ガスの状況を合わせて確認し、報告しましょう。

打診では鼓音と濁音を比べる

打診は、利き手ではない方の中指を腹壁へ密着させます。
利き手の中指で、腹壁に当てた中指の爪に近い関節部分を、手首のスナップを使って軽く叩きます。
右下腹部から時計回りに打診し、部位による音の違いを確認します。

確認する内容は次のとおりです。
・鼓音:太鼓のように高く響く音で、空気を含む胃や腸で聞かれやすい
・濁音:低く短い響きにくい音で、肝臓などの実質臓器で聞かれやすい

通常と異なる音の広がりや左右差がある場合は、腹部の膨隆や圧痛などの所見と合わせて報告します。

触診は痛みのない場所から行う

触診を行う前に手を温めます。
触診は、患者さんの表情や呼吸を見ながら、第2~4指をそろえて痛みのない部位から軽く押さえます。
浅い触診では、腹部が1~2cm程度沈むように触れます。
臓器や深い部位の腫瘤などを確認する場合は、腹部が4~5cm程度沈むように触れます。

確認する内容は次のとおりです。
・圧痛の部位
・腹部の硬さや筋性防御の有無
・腫瘤の有無

強い痛みや拍動性の膨らみがある場合は、無理に深く触れないようにします。
反跳痛は痛みを増強させるため、繰り返し確認しないようにします。
強い圧痛、筋性防御、板状硬、反跳痛がある場合は、速やかに報告しましょう。

まとめ

・腹部は、視診、聴診、打診、触診の順に診察します。
・各所見は単独で判断せず、腹痛、腹部膨満、嘔吐、排便・排ガスの状況と合わせて確認します。
・強い圧痛、筋性防御、板状硬、反跳痛などがある場合は、速やかに報告します。

参考文献

身体診察法と異常所見の診方 III.消化器系|日本内科学会雑誌
急性腹症|日本内科学会雑誌
第6回 腹部の診察|医学書院

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